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第8話 プチッとファンタジー

 俺は、学校に行く時必ず持っていくものがある。風邪や特別な用事で休まない限り絶対持っていくもの。それは、母が作った手作りのお弁当だ。いつも違うメニューを考えて、飽きがこないようにと工夫をこらしている。それが学校に行く楽しみになっている。一緒に食べる友人も俺の弁当を見るのが楽しみだと言っていた。今日はどんなものが入ってるか楽しみだ。


「ほら、今日もできたよ。汁がこぼれないように気をつけて持って行ってね」

「え、汁入ってるの? それ、困るし。教科書シミだらけにするのは勘弁してほしい」

「いいから。そうなったら、拭けばいいでしょ。電車、乗り遅れるよ!」

「わかったよ、行ってきます」


 弁当包みに入った弁当袋をバックに入れて、俺は、自転車に乗った。頬にあたる風が冷たかった。何となく、鼻歌が出てくる。もしかしたら、今日は肉じゃがかもしれないなと想像する。


―――学校の昼休み


「おい、綾聖あやせ。今日も弁当なんだろ。見せて見ろよ!」

 クラスメイトの結陽ゆうひはいつも一緒にお昼ご飯を食べる仲間だ。


「待て待て。俺がしっかり見てからに決まってるだろ!」


 一番最初に見るのは持ち主に決まってると手のひらを見せた。隣の席の凛沙りさもいつも弁当が気になって見に来ていた。


「綾聖くんのお弁当。昨日はトト〇だったよね。キャラ弁最高ね!」

「いつも、俺の母さんが丹精込めて作ったキャラ弁当に俺はいつもお腹が空いているんだよ。もったいなくて食べられないつーの。だから、コンビニでサンドイッチとかおにぎり追加で買ってるんだけどさ」

「そう言いながら、俺らに見せたいからだろ?」

「まぁ、そ、そうとも言うけどなぁ。さてさて、今日はどんな弁当かな?」

 期待をしながら、お弁当の蓋を開けた。周りの反応は昨日と比べて無反応。綾聖はそっと弁当の蓋を閉じた。


「ごめん……期待させておいて、全然普通のお弁当だった。肉じゃがに卵焼き。ほうれん草のおひたし、そして、ウィンナー。おもしろくもないよな。俺の腹は膨れるけども……」

「大丈夫、気にするな。そういう日もあるだろ。綾聖の母さんも疲れてるんだって!」

 バシッと肩をたたかれる綾聖の右手には箸でつかんだ肉じゃがのじゃがいもがあった。ポロッと床に落ちてしまう。


「俺のじゃがいもぉ!」


 慌てて落ちたじゃがいもを探した。食べられなくなったと思ったら、じゃがいもが2本の足を出して、ぴょこぴょこと歩いていた。


 まさか、これがびっくり弁当ってことか。


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