遊具がある近所の公園。今日は隣に住む蒼汰と一緒に遊びに来ていた。いつも放課後や、土日の暇な時間にふらっと来ていた。今日は何して遊ぼうかなと公園を見ていた。
「茉奈、何しているの?」
「……ねぇ、これって前からあったっけ?」
公園の隅の方、小さな鳥居と祠があった。その奥の方には、陶器でできた狐の像があった。
「えー、見た事ないかも。こんなのあったんだね」
蒼汰はじっくりと見るためにしゃがんで覗いていた。茉奈はちょっと怖くなって離れたところから見ていた。
「これって、狐さんだよね。可愛いね」
怖がりもせずに蒼汰は、陶器の狐を持ち上げた。
「ちょ、やめなよぉ。そういうのバチあたるって言わない? 鳥居があるってことは小さな神社ってことでしょう。小さいけどなぁ」
「ただのおもちゃだろ。これ。神社? こんな小さいの、気にしなきゃ大丈夫だって」
蒼汰は狐の陶器を持ち上げて、どうなっているかとぐるぐると調べていた。ふと、手が滑って、地面にポロッと落としてしまう。
「あ!? 蒼汰、やばいって!!」
「あ、やべぇ」
茉奈は、慌てて受け取ろうとしたが、間に合わず、バリンと割れた。
「あーあ。本当にバチあたるんだからぁ」
その一言を発した瞬間、バラバラに壊れた狐の陶器からモクモクと煙が出てきた。
「な、なんだ。火、出たのかな。消さないと、か、火事なるよなぁ?」
血相を変えて、蒼汰はその場を右往左往して何かをするつもりはなさそうだ。茉奈は、公園の水飲み場から水を運ぼうと持っていた水筒のコップをもちあげた時、煙の中から真っ白いふわふわの毛並みの狐が現れた。腰を抜かした蒼汰は、呼吸するのを忘れている。
「蒼汰!!」
「お前か。これを壊したのは……」
「あ……あ……」
狐は、人間の言葉を野太い声で話し出す。蒼汰の顎をクイッと持ち上げて、顔をじっくりと眺めた。
「ひぃいいい~……」
狐のまなざしが鋭く、ものすごく怖かった。茉奈は、早く助けなきゃと水筒のコップを地面に投げ捨てて、勢いよく怖がりながら、体当たりしようとしたら、狐をぺろぺろと蒼汰を舐め始めた。
「うわぁぁーーーーー」
「妾を救ってくれてありがたい。ありがたい!」
「なんで、べたべたとくっついてるの?! 気持ち悪いぃいーー」
茉奈は、突然態度が変わった狐を両手でどんと押した。ブランコの向こうの方に軽く吹っ飛んで側溝の中まで飛んで行った。
「蒼汰、逃げるよ!」
腰を抜かした蒼汰の手を引っ張って、逃げだした。