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第14話 ゲーセンの闇

「あーちくしょう。欲しいのに、全然取れない」


俺はごく平凡な高校2年。部活もろくに続かない。なまけもの。


 春休みに入り、暇すぎて一人で近所のゲーセンに来ていた。UFOキャッチャーに手をつける。買った方が安いんじゃないかと思いながら、両替して崩したお金でお菓子を取ったり、10円のUFOキャッチャーでいるかいらないかわからない商品の毛がモコモコキーホルダーに夢中になっていた。そこまで欲しくもないものに熱中し苦虫をつぶす。何をここまで無駄にお金を消費しているか自分でもわからない。取れた達成感を味わいたいのだろうか。


「ねぇ、たっくん。この香水取ってよぉ」


 隣にいたカップルの彼女の方が100円キャッチャーをやっていたが、彼氏は小さな不細工なうさぎのぬいぐるみを10円を使って何度も挑戦していた。


「俺は、絶対これが欲しいから。自分で取ればいいだろ」


「えーー……」


 見た目はお嬢様育ちであろう彼女はブランドバックをぶらさげて、イラっとしながらゲーセンの店員に声をかけていた。


(彼氏がだめなら、店員かってことか?)


 俺は、キャラクターボールペンが取れるUFOキャッチャーをしながら、横目で見ていた。すると、店員は彼女から大量の札束を受け取ると、中に入ってる香水をごっそりとビニール袋に入れて渡していた。ゲームもくそもない。購入しているんじゃないか。


 どんなシステムだよと俺は、自分の目を疑った。すると、女のお尻から太くて狸のように茶色いしっぽが生えているのが見えた。ゲーセンの店員の目は、乗り移ったように虚ろになっていた。


 彼氏は、彼女の行動など気にもせず、夢中にゲームを楽しんでいた。相変わらず、目標の物は取れないらしい。


 俺は、違和感を覚えた。

 まさか、ここのゲーセンは、普通にやってても商品はとれないシステムじゃないかと想像する。


「響子!! 俺は、何回やってもとれないから、帰るからな」


 イライラが止まらない男は、UFOキャッチャーの機械をダンッとたたいた。


 軽くたたいたはずが、バリンとガラスが割れる。


 お店のカウンターから黒い服を着たたくさんの店員が駆け出してきて、有無も言わせず機械を壊した男を担いでおみこしのように奥の方へ連れていく。


「やめろーーー。離せ!!」


 青白く光る丸い空間に男は、店員とともに吸い込まれていく。


 光が消えると誰もいなくなった。俺は体が震えて怖くなり、すぐにゲーセンの外へ走り出す。


 女は、にやりと笑って姿を消した。


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