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第16話 まさかのザクザクと出てくる

「おはよう!」


 私の高校には、占いや風水好きの女友達がいた。見かけはごく普通の女の子。でも、話し出すとそこまで信じてるのかと疑うくらいだ。髪まで覆う服装をしてしまえば、まるで占い師のようだ。


「おはよう。今朝は、転ばなかった?」


 早速、今朝の星座占いのことだろうか。確かに運気は最下位だったが、転ぶことはなかった。そもそも、占い以前に何もないところで転ぶのは日常茶飯事だ。


「もう、惟叶ゆいかはすぐ星座占いのこと言うんだから。転ぶわけないでしょう」


「本当? 英理那えりなはさそり座だったよね。膝をけがするかもしれないって出てたから気を付けて。ちなみに私は今日運勢第1位で臨時収入あるかもしれないんだってさ」


「はいはい。わかりました。おめでとうございます」

「あ、それ。信じてないでしょう」


 自分の席に着いて、バックをフックにかけた。持ってきた水筒を出して、お茶を飲もうとした。慌てていたわけでもなく、ちょっとだけ制服にかかってしまうアクシデントがあった。


「あ。やっぱり。気を付けないと!」


 惟叶は、バックからポケットティッシュを取り出して、渡してくれた。女子力が高い惟叶に安堵する。英理那は普段、ティッシュをバックに入れる癖がない。ありがたやーと拝むようにお茶で濡れた部分を拭いた。そうしてるうちに、惟叶はバックからチラリと財布が見えた。煌々と輝く黄色の長財布だった。英理那は、眩しくて目をつぶってしまった。


「惟叶、その財布っていったい何よ。眩しい」

「知りたい?」

「え、まさか。風水で金運が上がるから黄色の長財布ってこと?」

「そう、よくご存じで。その通りよ。そうだなぁ、特別に英理那だけ見せるね」


 惟叶は、机の下の方でぱかっと長財布が開いて、次から次とお札が増えていく。でも今は必要ないと言いながら、パタンと閉めると一瞬にして消えた。


「今のなに? どういうこと?」

「へへへ、これが私の風水の力。むしろ、魔法ね」

「本物なの?」

「当たり前。ほら、みてごらんよ」

 またパカッと財布を開けて、1万円札を取り出した。どこから出てくるのか。


「ほ、本物だ。すごいね」

「これ、私の銀行口座とつながってる財布なんよ。必要な時に、ここに移動してくる」

「え、つまりは本当に稼いだお金?」

「まーね。アルバイトしてるから」

「占いの配信でしょ」

「そ、ライブ配信のバイトね」


 時代は変わったなと感じた。


「……お金が移動するんかい!?」


 思わず時差のあるツッコミをした。

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