「おはよう!」
私の高校には、占いや風水好きの女友達がいた。見かけはごく普通の女の子。でも、話し出すとそこまで信じてるのかと疑うくらいだ。髪まで覆う服装をしてしまえば、まるで占い師のようだ。
「おはよう。今朝は、転ばなかった?」
早速、今朝の星座占いのことだろうか。確かに運気は最下位だったが、転ぶことはなかった。そもそも、占い以前に何もないところで転ぶのは日常茶飯事だ。
「もう、
「本当?
「はいはい。わかりました。おめでとうございます」
「あ、それ。信じてないでしょう」
自分の席に着いて、バックをフックにかけた。持ってきた水筒を出して、お茶を飲もうとした。慌てていたわけでもなく、ちょっとだけ制服にかかってしまうアクシデントがあった。
「あ。やっぱり。気を付けないと!」
惟叶は、バックからポケットティッシュを取り出して、渡してくれた。女子力が高い惟叶に安堵する。英理那は普段、ティッシュをバックに入れる癖がない。ありがたやーと拝むようにお茶で濡れた部分を拭いた。そうしてるうちに、惟叶はバックからチラリと財布が見えた。煌々と輝く黄色の長財布だった。英理那は、眩しくて目をつぶってしまった。
「惟叶、その財布っていったい何よ。眩しい」
「知りたい?」
「え、まさか。風水で金運が上がるから黄色の長財布ってこと?」
「そう、よくご存じで。その通りよ。そうだなぁ、特別に英理那だけ見せるね」
惟叶は、机の下の方でぱかっと長財布が開いて、次から次とお札が増えていく。でも今は必要ないと言いながら、パタンと閉めると一瞬にして消えた。
「今のなに? どういうこと?」
「へへへ、これが私の風水の力。むしろ、魔法ね」
「本物なの?」
「当たり前。ほら、みてごらんよ」
またパカッと財布を開けて、1万円札を取り出した。どこから出てくるのか。
「ほ、本物だ。すごいね」
「これ、私の銀行口座とつながってる財布なんよ。必要な時に、ここに移動してくる」
「え、つまりは本当に稼いだお金?」
「まーね。アルバイトしてるから」
「占いの配信でしょ」
「そ、ライブ配信のバイトね」
時代は変わったなと感じた。
「……お金が移動するんかい!?」
思わず時差のあるツッコミをした。