「私って仕事以外のこと一生懸命やってすごくない?」
高校からの同級生が電話でいつもマウントとって、一方的に話してくる。こちらの話をしようものなら、軽くあしらわれて聞きもしない。私の話に興味がないようで、相槌を打つだけ。この関係性ってホントに友達なのか。彼女と会うたびに疑問すら浮かぶ。これって友達じゃなくて、カウンセラーの先生に私がなってるだけで友達としてのメリットないと思い始めてきた。
「そうだね。すごいよ。頑張ってるよ。えらいえらい」
「でしょ、でしょ。そうだよね!」
そう褒めれば上機嫌。彼女の機嫌を取るので精一杯。楽しくなんてない。飲むお酒も美味しいものがなんだかまずく感じる。
「ごめんね。明日、実家に帰るからそろそろ出るわ」
一緒の居酒屋で久しぶりに飲むことになったが、食べるものも食べ終わった。1時間もしないうちに帰ろうとした。
「えー、嘘。やだぁ。あたしの話を聞いてよぉ」
(さっきからずっと聞きっぱなしだよ)
「あーはいはい。今度、電話で聞いてあげるよ。ごめんね。お金、ここに置くから。またね」
「むー、もう。いいよぉ。一人でがぶがぶ飲んじゃうからねーー」
(勝手にどうぞぉ)
学生の頃は、青春を謳歌するのに楽しいことばかりで佑衣子といるのも気が楽だった。大人になって相談を乗るたびにマウントの嵐。こっちは、独身だから自由でしょうとシングルマザーになってからずっと付きっ切り。子供は母親に預けて自由気まま。一緒にいても愚痴ばかり。もう、この関係性終わらせたい。
―――自宅のドアを開けると、ひらりと受けポストからチラシが落ちてきた。
「んー? 『嫌な人を断ち切りませんか?』って? どういうこと」
そのチラシは呪いを掛けられる霊能力者の宣伝だった。今なら、キャンペーン中でお得と書かれている。いかにも怪しい。まぁ、それが本当にできるのなら願ったり叶ったりだ。私は、家のかぎを玄関の棚に置いて、リビングのテーブルでもう一度チラシを凝視した。
「呪いをかけても、自分には何も問題は起きませんって、人を呪うって。何か怖いなぁ……」
そう言いつつも、スマホのQRコードを読み込んでついつい申し込みを完了させてしまう。今よりもっと幸せな時間を過ごしたい一心だ。
霊能者の呪いを佑衣子にかけてから数日後、心が軽くなった。 佑衣子は、突然の転勤で引っ越すことになったらしい。呪いだったのかは不明。不思議なことだが、良かったと思っている。