雲一つないよく晴れた青空の下の大きな公園で、小学2年の
「何、これ。めっちゃ、楽しい! 最高じゃん。もう一回滑る」
「駿介~、帰るよぉーーー」
抱っこヒモで1歳の弟の
「うっひょぉーーー。すっげー楽しい!!」
「駿介ーーーー」
イライラしながら、叫ぶ優衣の声がスローモーションで野太い男の人の声に変化した。目の前の空間が歪み、滑り台を進み続けると、終わりが見えなくなった。とまらずにずっとずっと同じ青くつながっていた。体が滑って、とまらない。だんだん楽しさから恐怖を覚える。これは、一体どこに行くんだろうと駿介は自分の体をぎゅっと抱きしめて、縮こませた。目をぎゅっとつぶって、恐怖を紛らわせた。体が少し宙に浮く。
「駿介!!!」
パチンと額に衝撃が走った。優衣の声がいつも通りにうるさかった。景色が変わっていた。
「あ……あれ?」
いつの間にか、滑り台を滑り終えていた。元に戻っている。
「ちょっと、駿介。いつまで滑ってるのよ!! 奏太のおむつ取り換えにいかないといけないから行くよ。夕ご飯の準備もしないといけないから」
「え、あ。うん。お母さん、おやつも食べたい!!」
「えーーーー。何回言っても、返事なかったからなぁ。どうしようかな」
「ごめんなさい! 聞こえなかったから」
「えー、仕方ないなぁ。今回は、素直に謝ったから。おやつはポテトチップスね」
「わーい。やったぁ」
走り去って行く優衣の後を駿介は、ひょいっとジャンプして追いかける。さっきの空間はなんだったんだろうと思いながら、後ろを振り返った。長かったはずの大きな滑り台は、シンプルな滑り台に切り替わっていた。駿介の滑った滑り台はどこにあったんだろうかわからない。背筋がぞわぞわとしたが、気にしないようにして優衣の左腕をしっかり握りしめて、ゆっくりと歩いて帰った。
公園の端っこにある木の上では、少し大きなカラスが駿介の背中をじっと見て、いなくなったのを確かめて、カァと一声鳴いて飛び立っていった。