「ストライク!! やったね」
今日は、家族4人でボウリングに遊びに来ていた。長男の
昔、プロボーラーとして活躍していた父と比べたら、月とスッポンだが、息子が結果を出せるようになり、微笑ましい父だった。
「悠翔~、やるじゃないか。そこまで練習重ねてないのに、すごいな」
「へへへ、見よう見まねだよ。父さんのやり方をじっくり観察していただけ」
「兄ちゃん、ばっかりずるい! 僕もストライク狙うんだ」
次男の
「ストライクだぁーーー!」
もちろん、幼稚園児はガターにならないキッズサポートがついている。のんびりゆっくり進んでピンのは7本倒れた。
「むむむ!! あと少しだったのに~」
「甘い甘い!!」
悠翔は、強さを見せたくて、回転させたボールを転がした。見事、残り3本のピンを倒す。モニターには花火のイラストにスペアと表示された。
「おめでとう」
妻の佑子は、複雑な気持ちを持ちながら、長男の悠翔に声をかけた。
「なんで、そんな顔なわけ?」
「晃泰がやってたのを奪っちゃだめだよ」
「……すいませんでしたぁ」
悠翔は、頬を膨らまして、もう一度最初からボールを気持ちを込めて投げた。すると、レーンがぐわんとデコボコに動き、ピンの10本がスポンジの様にふわふわと転がっていく。ボールで倒す前にぐだぐだと崩れた。ストライクではなかった。
「はぁ?! なんで、どういうことよ」
「ちょっと、悠翔。大きな声出しすぎ。恥ずかしいからやめて」
「え?」
母の声に反応した悠翔を振り返った。ガタンとボールが落ちる。完全なるガターになった。
「何やってるの?」
「げ、マジで。嘘だろ。そんな。ストライク狙うつもりだったのに」
目を何度もこすって、現実を直視する。ピンは1本も倒れていない。
「悠翔、大丈夫か? 晃泰と一緒にガターサポートやった方いいじゃないのか?」
父の
「俺は強いの!」
晃泰の顔に近づけて、睨みつけた。兄弟の喧嘩が始まる。
「悠翔!!」
母の怒声が響いた。