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第40話 小さな占い師

 何だか妙にそわそわして落ち着かない。もやもやと気持ちが晴れなかった。そんな中、長男がもう寝ようと腕を引っ張る。寝かしつけだとわかっていても、まだ頭の中はぐちゃぐちゃに。何が心配って今後の未来のことが頭から離れない。

 無駄にSNSを見てるとマイナスな考えがとまらないのだ。


「……あー、もう。ねぇねぇ、お母さんこれからどうなると思う?」


 夜寝る前の絵本を読む気力が無くなった。6歳の勘の鋭い長男に占い師に頼むように聞いてみた。真剣に考えてくれるようで、ふとんの中でもぞもぞと占いし始めた。


「ちょっと待って。呼んでみるから。えっと……テントウムシさん、教えてください。お母さんは今後どうなりますか?」


 横になりながら、真っ暗な部屋で、手を合わせて、何もいない天井に唱え始めた。私は隣で一緒に横になって見つめていた。


「ふむふむ、うん。うん。わかった。そう伝えるね。……お母さん、あのね。しっかり仕事をやった方がいいよ。具合悪い時はスマホでもいいし、調子いい時はパソコンでね。やり続けてねだって」


「え、あー、そうなんだ。そして、あとは何か言ってない?」


「ちょっと待って。うーんと、シルバーのテントウムシさんは難しいこと言って、何を言ってるかわからないから、金色のテントウムシさんに聞くね」


 手招きして空中に話を聞く長男は、真剣な様子で話し出す。


「あ、お母さん。買い物するとき、きちんと値段見て買うんだよ。買いすぎ注意だって」

「げ、何か。見透かされてる気がするわ。なんで、わかるのよ!?」

「え、だって。テントウムシさんが言うだもん。僕、知らないよぉ」


 (金色が言うってことはそれは金運の神様なのかなぁ。金運教えてってなんて聞いてないのに、急に言うのか)


「だから、とにかく気を付けてだって」

「う、うん。わかりました!」


 寝る前の小さな占い師さん。信じるか信じないかは私次第だとわかっていても不思議な気持ちになってしまう。本当にそこに存在するかのようだ。


 そっとベッドから抜けて、部屋から出ようとすると、ふわりと金粉が舞った気がした。金色テントウムシが飛んで行ったのかもしれない。


「おやすみ。小さな占い師さん。未来は明るい気がしたよ。ありがとうね」


 私はそっと話しかけた。長男は、にやりと笑って熟睡していた。

 ドアがぎーっと鳴って閉まった。


「いいことありますように!」

 私はリビングに戻ってパソコンの蓋を開けた。今夜も文字を書き続けた。




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