「あー。具合悪いなぁ〜……」
朝起きた瞬間、本当は何ともない。熱もない。頭も痛くない。でも何となく、ぼんやりと学校に行きたくないと思ってしまった。
「ほら、朝だよ。起きなさい」
母が声をかけてきた。いつもその一言で起きていたが、起きようともしなかった。
「え、まさか。今日、休むの?」
「うん、ちょっと調子悪いから」
「あ、そう。学校に電話しておくね。ゆっくり休みな」
母は、止めることもなく、あっさりと学校に休みの連絡を入れた。クラスメイトに登校拒否の子がいる話をしても気にもしない母。しっかりと自分のことを見ててくれると思うと何だかほっとする。今日、しっかりと休んだら、明日は行こうかな。ふーっとため息をついて、うつ伏せになる。ベッドの脇に置いていた眼鏡をかけた。休むと決意して、何回も読んでも飽きない漫画本を読むことにした。
眼鏡をかけると違和感を感じた。好きな漫画本が読めない。眼鏡の向こう側は学校の教室になっている。
「あれ。これ、どういうことだろう」
気になって眼鏡をはずして、かけてを繰り返した。何度やっても眼鏡のレンズの向こう側は教室が見えた。気になってそのまま教室の様子を伺った。
「おはよう。昨日の宿題、全部解けた?」
「おはよう。算数のプリントのこと?」
同級生の
(嘘でしょう?! 私の体で何をする気だ!)
ありえない行動に苛立ちが止まらない。檻の中に入ったライオンのごとく歯をむき出した。
「樹!!! ふざけるんじゃないわよ!」
自分の声がエコーかかって響いていた―――
――――目を覚ますとベッドの上で、真っ白い天井が見えた。背中に汗がびっしょりだった。さっきまでのことがすべて夢だった。
「姉ちゃん、何してるのさ。早く起きろって」
「……あんた、夢に出てくるなって!」
「げ、本当?? 出演料ちょうだいよ!!」
「そんなのないわーー」
寝起きが悪く、さらに不機嫌になった私は、樹の背中をパコパコたたいた。
「朝から暴れるな!」
「うっさいわ!」