ピロピロピローン
ゲーム画面で音が鳴った。サイコロを振って、日本地図を旅するゲームだ。出た目の数が6が出て、空にぷかぷかと天使様が浮かんでいる。
「マジか!? 超ラッキーじゃん。俺、臨時収入出まくり〜イエーーイ!」
高校の同級生同士4人で、琢哉の家に遊びに来ていた。ゲームで対戦したら、クラスメイトのお姫様でもある響子に告白するのは誰だゲームをしていた。1位になったやつが先に告白というルールを半ば強制的に決められた。もちろん、4人とも譲れない。みんなのアイドル、もしくは姫にしたいと思うぐらい美人なんだ。
「智司、ずるいなー。このまま行くと、俺が貧乏神つくんじゃねーか」
と、サッカー大好き琢哉がつぶやく。
「俺はセーフだけど、かなりの差があるな」
インテリでメガネを掛け直す修司。
「俺、そこまで興味ないんだけどよな、そのゲーム」
オタクだが、ゲームよりアニメ派の誠也。
「この天使様のおかげで財産一人勝ちだな!」
「はいはい、ラッキーボーイだね。そういやさ、天使様と言えば、お金持ち界隈でも不思議なことが起きてるって話、知ってる?」
突然、話を切り出したのは琢哉だ。お気に入りのサッカーボールをぽんぽんと上に上げてキャッチする。
「あ、俺も知ってる。それって、手元にあるお金がゼロになっても不思議な力で臨時収入って話。あ、あれ、ゲームと同じシステムになるってこと??」
誠也が腕を組んで話す。そこへ修司がメガネをかけ直して言い始めた。
「それってただ、単に給料が入っただけじゃないのか? 働いてるだろ、金持ちなんだし」
ごくごく当たり前の話をする修司に、琢哉が答える。
「いやいや、給料とは別に違ったルートからお金を稼ぐってことなんだってよ。すっげーな。夢あるよ」
「本当にそんなことが起きるなら、このゲームの天使様って、夢物語じゃないってことか」
「俺には、ボン、キュン、ボンの天使様やってきて欲しいなぁ」
智司は手を合わせて窓の外に向かって祈る。修司は呆れた様子で肩をすくめる。
「お前の場合は、臨時収入じゃない別のことを言ってるんじゃないか?」
「へへへ……」
智司は、苦笑いをして、ゲームに集中する。本当に臨時収入が入ると良いなとお互いに思っていた。
不意にインターフォンが鳴る。
「琢哉、荷物よ」
宅配便が届いたようで、琢哉の母が1階から叫んでいる。
薄い段ボール箱開けると、ギフト券1万円分が入っていた。
「俺、リアルラッキーボーイじゃん!」