あまりにも暇すぎて、外に出かける決心をした。特に友達がいない。予定もない。気を遣うのがいやだ。でも、欲求は満たされない。とりあえず、コンビニでも行こうかと蒼汰は、自転車に乗ろうとスタンドを上げた。サドルに座ろうとすると、うにっと変な感触をお尻で感じた。
「え……」
座るのをやめて、立ち上がる。じっとサドルを見ても何もない。手で触ってもさっきの感触はない。気のせいかと思って、またサドルに座った。またうにっとした感覚があった。
「絶対、変だ」
冷や汗が止まらない。何だかゾクッとする。
「……さっきから何なんだよ。僕のこと見えないの?」
甲高い声がする。自転車のサドルをもう一度見ると、真っ白い毛のモフモフした生き物が怒りをあらわにしていた。
「え?」
変な生き物が突然現れた。犬や猫にしては小さい。一体何の生き物なのか。腰をかがめて、じっと見つめた。モフモフのその生き物は、小刻みにジャンプして怒っているが、なんと言ってるかわからない。
「はぁ?」
蒼汰は、顔を近づけてみるが、何が言いたいかわからずに顔をひっかかれてしまった。
「いたぁ!」
「よく人の話を聞けぇ」
「え、人じゃねぇだろ。いってぇなぁ~」
「ひ、人じゃない……そんな細かい話はいい! 昼寝を邪魔するんじゃない!」
「あ、昼寝? 俺の自転車のサドルで昼寝するんじゃない!」
蒼汰もイライラを受け取って最初は可愛いと思った白いモフモフが嫌なやつと判断し、気にせず自転車を進行方向に向けた。コンビニに行くという目的を思い出し、ペダルを踏んだ。
「待て待て。話は終わってない!」
白いモフモフは、蒼汰の頭にふわんと乗って爽やかに吹く風を感じていた。静かにくつろいでいる。
「俺の頭をイス代わりにするんじゃない」
「……」
目をつぶって、何も言わなくなった。自転車のチェーンの音が響く。蒼汰の横を乗用車が通り過ぎた。
「おらは、モッフン。以後、丁寧に扱え」
蒼汰の頭の上は居心地がよさそうで、目をつぶってちょうどいいふわりと吹く風をずっとモッフンは、感じていた。さっきまでイライラしていた気持ちが消えて、ほっこりしてきた。コンビニ行く用事も何となく、どうでもよくなって、このままサイクリングを楽しむのもありかといつも通らない道を進んだ。
一人だった寂しさは、モッフンと会った瞬間からすっかり消えていた。いつの間にか深い眠りについたモッフンを頭からおろして手のひらに乗せるとふわふわで癒された。