「国際連合人間環境決議において、人間が見る夢を規制する。夢は、単なる幻想ではなく、現実世界と密接に関連している。夢の内容は、日中の経験や思考、感情に影響され、また、夢の内容が現実世界に影響を与えることもあり得る。
この発表がなされたのは、2119年。
同年、国際連合人間環境会議にて、「D.N.S.C.法案」、すなわち、Dream Neural Suppression Conversion(夢中枢抑制手術)の強制適用が可決された。
2200年以降に産まれる人類は、
「夢を去勢される手術」を受ける。
2119年、国際連合人間環境会議で、
可決、決定。
世界中に激震が走った。
夢を見る事が?犯罪?
だいたい去勢って??
各国では、市民団体・宗教者・学者らによる大規模な抗議運動が起きた。しかし、国連は各国政府に対して通達を出す。
「反夢思想は、文明の安定を脅かす“精神的テロ”である」
結果、各国において大量の抗議者が反逆者として連行され、留置・収監される事態に発展した。
この事件は後に、歴史上**「2199黙件(もくけん)」**として記録される。だがその真相の大半は、いまだに秘匿されたままだ。
技術提供元は「AI開発機関」だった。
“人間は夢を持ちすぎる”という判断を、かつて最も進化した機械知性が下した。
夢を制限する手術は、**人類の“自己調整”ではなく、機械による“予防措置”**だったのだ。
かの有名な心理学者で、ポーランドの名門大学であるヤギェウォ大学教授、マシュミェ・ブローウスキは、
「夢の全ては、人知に至るものではない。夢の中で人間は「起こりうる可能性」を無意識に“選んで”いる。確かに、夢は未来の“分岐試行”であり、実際に現実を操作している可能性がある。しかしそれが全てではなく、無知の域による仮想体とも言える夢を見ているに過ぎないのだ。」
との見解を述べた後、国連の指示により逮捕、死刑宣告を受けて銃殺となる。
当たり前のように人類が見て来た夢。
それが、喪われる時が来た。