新宿、バリケードの、内側に潜んでいた陸上自衛隊員は、全てカナエが主催する地下講義活動である禍波得塾の塾生であった。彼らの全ては政府ではなくカナエに従事していた。
AI、Wednesday。
禍波得に属する者に対して、
午後1時59分に指示。
奴らに正義の鉄槌を喰らわせよ。
ラ・マルセイエーズが高らかに鳴り響く。
血まみれの旗を掲げよ
血まみれの旗を掲げよ!!
10式戦車の砲弾は、バリケードも守護者をもぶち破り、硝煙と瓦礫の山を築いた後、完全封鎖の先発投手の如く、後方に下がる。後はリリーフ人に、任せる。
なだれ込む黒い軍団、その光景たるや、
自らの命を「兵戈」と化した者達、
普賢菩薩ですら目を覆う。
続々と浸食する黒い集団。
外でも、敵を待ち受ける。
守護者の屍を乗り越え
未だ抵抗を続ける者に降り注ぐ
何百機という自爆型ドローンの
慈悲無き裁き
黒い軍団のVRX-09 フレイムレインが逃げ行く守護者に制裁の一撃を放ち続ける…………
VRX-09 フレイムレイン
•種別: 汎用高速連射式エネルギーライフル
•階級: 一般兵向け
•特徴: 短いチャージで連射可能な光弾を射出。標的への攻撃ではなく、威圧と制圧を意図して設計されている。
「なんだ!!この、事態ハァ!!!!!」
「全滅だぞ、自衛隊が……全滅だぞ!!」
「AIは!!!AIはどうした!!!」
「……………………そ、そこで、たい、待機せよ、と……」
発狂する政府中央議事堂。
「この、殺戮…………世界に晒されて……」
「我が、日本の燦々たる痴態………………」
山、山、や山本、山、ま、山…… ……
死体の山
群衆もこれに呼応するかのように
山を越えて、新宿を目指す
黒い軍団の計らいで、ハル達はユメ達を道から外れた空き地に移動させる。
「お前達、来るか?」
全員が頷く。
黒い男は、近くに留め置いているジープを指さす。
「あれに武装を積んでいる。好きにするがいい」
ハル達は、ジープに向かって奔る。
ジーブには別の男が待機している。
男は手慣れたようで、其れ其れ1人ずつを確認しながら、合ったサイズの戦闘服を手渡す。そして、AK-47。
着替える子供達を見ながら、男は過去を思い出す。
何度同じ事を彼等に言ったのか
そして、帰って来なかったのか
これが、革命なのか
俺達は、この子達の屍を乗り越えて
今までやって来たんじゃないのか
「お前達、ひとつ聞きたい」
黒い男はマスクを外す。
「し、シュウさん……………………」
「ハル、これから先は…………分かってんだろな」
着替えるハル達は一瞬、手を止めたが
そのまま続けながら答える
「何でしょうか」
「お前達が、死してまで得たいものは何だ」
ハルは、みんなの顔を見る
ブッッッ!!!
チカラが堪えきれず、笑いを漏らす。
うぅはははははははははああああぁぁぁあ!!!!
チカラが笑う
「い、イヒヒヒ…………今日一のオチだわ!!」
「おっさん、おもろかったでぇ!!!」
若者は、笑い飛ばした。
「ふざけるな!!!!お前ら!!
死を目の前にしてんのが、分かんねぇのか!!」
タネが、静かに続ける。
「おっさん、ペットボトルの水、もらえるかな」
「お、おぅ……、ほれ」
全員が、ペットボトルを受け取る。
シュッ
ベルトを締めたハルが答える。
「シュウさん、俺達は、もう死んでんですよ」
「…………………………えっ?」
「ナダも、アコも、ユメも、森野も…………先に行っただけだ。シュウさん、分かるか?みんな正しい事をしたんだよ。1人ですら間違った事をしていない。生死?生き物だからいつかは死ぬんだろ?それが今ならそれで良い。俺達も、正しい事をする」
ハル達全員が、眠る仲間の傍に近付く。
チカラが一歩前に進む。
「おっさん……いや、森野先生。いっつもあんた、バカやっててて、これが先生かよって……思ってたけどさ、あれ……ワザとだったんじゃないのかな…………。最後に、先生として、大事にするものは何なのかを、教えてくれて……本当に有難う御座いました!」
カダも出る。
「…………ナダ。ごめん、一緒に逝けなくて…………産まれてからずっと一緒だったから、俺は今、すごく後悔してる。すぐに逝くからさ、まだ昇んなよ。」
タケ・タネ・コン………………
彼らは(勝手にではあるが)アコFCを裏で作っていた3人だ。
3人は事実を受け入れられず、ずっと泣き続けている。
「あぁ…………、こういう時なんだよなぁ……」
「……うん……」
「……なんで…………護れなかったんだろ」
「……勇気…………それがあれば……」
「……アコさん…………………………」
その横に、佇むハル。
寝坊して眠っているような、
そんなあどけない顔をしたユメ。
みんなと同じように、ペットボトルの水をタオルに浸して、血塗れの顔を、優しく拭いていく。
朝のままのユメ。柔らかい…………
天使の………ままの…………
俺は…………、ユメと会えて良かったと思ってる。
いや、、最高の出会いだった……ありがとう、ユメ。
……………………ありがとう
もっと、話したい。ずっと一緒にいたい。
温もりを感じたい。もっと、愛し合いたい。
でも、これ以上、話したら、
ダメになっちゃいそうだから
だから、
ユメ、一緒に行こう
全員、黙祷。
「あ、シュウさん…これ、服………ありがとう御座いました」
全員がおっさんに深く一礼して感謝の意を表す
「よし、いこか!!!」
「おけ!!!」
銃のロックを解除する。
その決意。
前線に奔る。
親の元を離れた若き獅子達。
解き放たれる、その為に。
ヨハネ10:29
「私に彼らをお与えになった父は、全てに勝って偉大です。誰も私の父の御手から、彼らを奪い去る事は出来ません。」
「神が私たちの味方であるなら、誰が私達に敵対出来るでしょう。…神に選ばれた人々を訴えるのは誰ですか。神が義と認めて下さるのです。罪に定めようとするのは誰ですか。死んで下さった方、いや、蘇られた方であるキリスト・イエスが、神の右の座に着き、私たちの為ににとりなしていて下さるのです。」
「さぁ、進みましょう、我らが安息の地を目指して。多きの屍を乗り越えて、焦土に焼かれた、風吹けば無きにし全ての、この地を枕にして」
ユメ…………………………