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第3話 マジで要らない


 冷たく、ひんやりとした空気が流れ、死者の嘆きが飛び交う中、一人の女神とその使者が話していた。


「アネシス様。例の者来ました」


肘をつきながら自堕落な姿を見せつけている彼女はその者に目を合わせることなく返答する。


「送り返しといて。あいつ、私の銅像に放尿したんだよ。まじありえなくない?罰当たりなやつはいたけどあいつは無理だわ。見てた感じサイテーだし」

「『送り返しといて』、と言われましても……」

「普通に冥界の門閉めて。あいつが来るたびに。その都度、特別休暇あげるからさ。テンション上がるっしょ?」

「上がるは上がりますが……。それって不死になっちゃうんじゃ」

「まぁそういうこと。ちゃんと死ぬたびに痛みはあるし。冥界と現世の間をうろちょろされてもねー。私が他の神から頼んでる品とか、たまに通るし」

「あそこを通じて要らないものを仕入れていたんですね!」


彼女はむっとした顔をする。


「失礼。ですが……他の神に怒られますよ?特に生命の神とか」

「良いよ良いよ。私が謝っとくから。それに私、今までそういうこと、してこなかったんだよ?一回ぐらいセーフっしょ」

「そういうもんですかね?」

「本当は私がボコボコにしてやりたいけどマジで顔も見たくないからな〜。酔った勢いで子供つき飛ばすか?普通」

「でもアネシス様も子供の魂がやってきた時に質問が多く、うざく感じて遠くに飛ばしたじゃないですか」

「ま、まぁ?私は女神だし?」

「はぁ……分かりました。一応いつでも彼を見られるようにマークしときますね」

「勿体無い。マークできる人数限られてるんでしょ?それならかっこいい人だけにしたら?」

「この人も悪くないと思いますけどね」


彼女は首に手を当てて


「つぎ、こいつのこと褒めたらこれだから」

「了解です」

「あ、あとこいつ驚かせたいから別の場所に生き返らせといて」

「え〜。面倒ですよ。魂確保して、わざわざ死体も運んで別の場所に植え付けるとか」

「今回だけで良いから。後は死んだらすぐにその場にある死体に植え付けたら良いから」

「特別休暇5日分、追加でお願いします」

「えー。ま、良いよ〜。こいつが死んだらその時は働いてね」

「構いませんよ!(そんなに死なないだろう)」







自然豊かな場所で一人の女神が歩いていた。彼女の歩いた軌跡からは花が生まれ、木々が育ち、枯れていた、寿命を尽くしたはずの生命が蘇っていった。


「あら。小鳥さん。元気そうで良かったわ」


彼女の綺麗な小指に小鳥は乗り、彼女の美しさを歌う。


「ふふっ。ありがとう。でももう行かないと」


小鳥は彼女と離れる前に名を呼んだ。

『生命の神、メルシス』と。





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