太陽光パネルが敷き詰められた広大な山岳で、博輝は上空の3人を見上げて驚いた
「貴方がたは・・・プロレスラーのストロング・
「まさか、転生した勇者エルダが、まだ高校生だったとは・・・」
ストロング十河が唖然とした
「君は本当に、勇者エルダの転生者なのか?」
斎原選手が疑問視した
「そうですよ」
博輝が光の刃を見せると
河馬錦が驚いた
「お〜〜まさに、勇者の証『金色に耀く御剣』だ」
「何故、今世では名声を得て、平和にそして穏やかに暮らしてる貴方たちが、わざわざ前世の争い事に関わるのですか・・・獣王軍・三重騎の皆さん」
博輝が質問すると、ストロング十河は驚いた
「幾多の試練を越え、平和な世界をもたらした勇者ほどの者に、我々の事を憶えていらっしゃるとは」
「ソルトさん、サロスさん、バルクさん・・・貴方がた三重騎は、『俺たち一行』を苦しめた『大きな障害』の1つだったからね」
博輝が苦笑いした
「それは光栄です」
ストロング十河は、博輝の言葉に感激したが、すぐに表情を変えた
「正々堂々と我々を打ち勝った事には感謝する・・・しかし、何故我々を討たずに生き恥を晒させた!」
ストロング十河は巨大な戦斧を持った象型の獣人・ソルトへ
斎原選手は巨大な棍棒を持った犀型の獣人・サロスへ
河馬錦は巨大なハンマーを持った河馬型の獣人・バルクへと
それぞれ巨体の獣人へと変態した
「勇者エルダ、覚悟をめされよ!」
サロスが博輝に向かって強襲した
『ドォォォン!』
ソルトの巨大な戦斧が地面に激突し、博輝はギリギリでそれを躱した
勢い余った三重騎たちの打撃が、山岳の太陽光パネルを広範囲に粉々に破壊した
「なんて破壊力だ・・・」
博輝は驚愕した
『ガキィィィン!』
サロスの棍棒と博輝の光の刃が激突した
巨体に似合わない素早い動きで、サロスが博輝を圧迫する
「鉄壁召喚!」
ソルトが鉄の魔法を発動させると、博輝の周りに鉄の壁が出現した
「岩石落とし!」
サロスが岩の魔法で上空から巨大な岩を落下させる
「水流攻撃!」
バルクが水の魔法で激流を博輝に向けて放った
「聖光障壁!」
博輝は光の盾を展開して攻撃を防いだが、三重騎の連携攻撃は止まらない
『バァァァン!』
バルクのハンマーが博輝の光の盾を打ち砕いた
博輝は空中に舞い上がって距離を取る
『ガシャァァン!』
地上では太陽光パネルが次々と破壊され
空中では戦いの振動が巻き散らされながら、縦横無尽に戦いが繰り広げられていた
「はあああ!」
博輝は光の刃を振り回しながら、ソルトの戦斧を受け止めた
しかし、その隙にサロスの棍棒が横から襲いかかる
「くっ!」
博輝は身を捻ってそれを避けたが、今度はバルクのハンマーが上から降り注いだ
『ドガガガガ!』
三重騎たちの重たい攻撃に博輝は徐々に押されていく
「勇者エルダの能力はこんなものではないだろう!」
バルクが勇者を挑発した
「流石は三重騎・・・ここで時間を食うわけにはいかない・・・使いたくはなかったけど」
博輝の身体が燦々と光り始めた
「うわああああ!」
三重騎たちはその眩しさに目を瞑り、攻撃を止めてしまった
三重騎が目を開けた時には、四対の純白な羽根を靡かせ、金色の鎧を身に纏った天使形態の博輝が、神々しく空中を舞っていた
「なんと美しい・・・」
その美しいまでの天使形態の博輝を、三重騎は構えを解き見惚れていた
「三重騎の皆さん、どうしたのですか・・・戦いは終わったのですか?」
呆然としている三重騎を博輝が覚ました
「我々の恨みを晴らさせて貰うぞ!」
三重騎たちが、それぞれの武器に自分たち最大級の魔法を纏わせて博輝に立ち向かった
「鉄神戦斧!」
「岩砕棍棒!」
「水流大槌!」
三重騎の最強攻撃が博輝に向かって放たれた
しかし・・・
『シャキィィィン!』
博輝は光の速さの如く、三重騎の武器を破壊し、それぞれの身体に大きな傷を負わせた
「ば、馬鹿な・・・」
三重騎たちは絶叫して地上に落下した
起き上がろうとしたが、大きな傷の痛みの余り、膝をつくのがやっとだった
「我々の負けだ・・・早く討て」
三重騎たちは降参し、討てと促したが、博輝は天使形態のまま言った
「分かりました・・・」
「ハイ・ヒール」
博輝が極大回復呪文をかけると、三重騎は完全回復した
「何故?」
三重騎の3人が唖然とした
博輝は天使形態から高校生に戻り
「貴方たちの帰りを待ってる者たちを悲しませてまで、討たれたいのですか?」
博輝が諭すと、三重騎の3人はハッとした表情で何も言えなくなった
「俺は、敵であっても生きて、魔なる者、聖なる者すべてが、泰平を愉しむ世にするために勇者となったのですよ・・・だから『敵を殺さず』を貫き通し、三重騎の皆さんも例外ではないのでしたよ」
博輝は前世で三重騎を討たなかった理由を話した
「我々は、散々敵を殺してきた・・・相手が抵抗しようが降伏してこようが関係なしにな・・・だからこんな残酷非道の者を生かすことなどないはずだ」
ソルトが反論したが、博輝は押し通した
「だからこそ、生き恥を晒してでも懸命に生きて、幸せを掴んで欲しいんだ」
「貴方がたは、何も自分の快楽や欲望の為に、相手を殺したのではないでしょう・・・仲間を思い、帰りを待つ者たちを護る為にでしょう」
博輝が説得すると、三重騎の3人はお互いに顔を見合わせた後、本来の人間の姿に戻った
「完敗だ・・・我々は、幾多の敵を殺した事への罪悪感から、討たれる事によって、逃げようとしたに過ぎないと気がついた」
ストロング十河が笑みを浮かべ、博輝に握手を求めた
「有名人から握手を求めるなんて恐縮するよ」
博輝は握手を交わした
同時に、斎原選手、河馬錦も手を握った
「前世の恨みが氷解できて、ありがとう」
3人は博輝に謝辞を送った
「申し訳ないが、転移の魔法で、我々を家の近くまで送って欲しい・・・移転の魔法を習得していないものでな」
斎原選手が恐縮しながら要望した
「はい、いいですよ」
博輝は快く転移の魔法をかけ、三重騎の3人を帰させた
・・・・・
破壊し尽くされた太陽光パネルの広大な山岳に1人残った博輝
「摩緒と柊直虎は、どうやらここから10km離れたゴルフ場にいるみたいだな」
博輝は摩緒の身体から出る波動をキャッチした
「だが、周防先生が心配だ・・・あの大岩という男の前世は確か、獣王軍総司令ゴテリア・・・獣王ライハイルと互角の戦闘力を持つ獣人だったはず」
博輝は周防のいる廃ショッピングモールへと魔法で移動したのだった