一方、摩緒と柊直虎が対戦した廃ゴルフ場では・・・
魔帝を覚醒しないまま気を失った摩緒と、戦う意欲を失った柊直虎の前に、突然上空から声が響いた
「魔帝を討つのではなかったのですか?」
鷹の頭部を持つ鳥人を先頭に、色んな鳥の頭部の鳥人10体が地上に着地し、やがて元の人間に戻った
柊直虎は淡々と挨拶した
「これはこれは、関東広域暴力団・鷹野会会長の鷹野親分さんと子分の皆様、わざわざ廃ゴルフ場まで御苦労様ね」
鷹野親分と呼ばれる、袴を着た貫禄のある男が憤慨しながら言った
「この廃ゴルフ場を貸してやったのは、魔帝を殺してくれるとの条件だ!」
「生殺与奪は、わたくしまたは、あのボーイが持ってますが?」
柊直虎が素で答えると、鷹野が怒りの声を上げた
「何だと〜〜日本企業連携団団長・
「あら、そうだったの・・・
柊直虎が澄まし顔で答えると、鷹野は愚痴った
「翼王様も翼王様だ・・・なんていい加減な要請をするんだ」
「ちゃらんぽらんな主人に仕えて大変ね」
柊直虎が同情すると、鷹野が怒鳴った
「獣王ライハイル様に言われたくありません!」
「ハハハ」
柊直虎は心当たりありそうな顔をした
今度は柊直虎が真剣な顔で言った
「鷹野親分さん、いや、翼大公爵・ホーシャルさん、余程魔帝様を恨んでるようね」
鷹野親分の心内を言い当てると、鷹野は正直に答えた
「当たり前でしょう、儂らが前世の時、スザックス様が『世界の支配』を目前に、魔帝ヒルガデントに殺されたのですからね」
「ふ〜ん、前翼王のね・・・」
柊直虎が呟いた瞬間、5人の子分が柊直虎に向かって拳銃を突きつけ、残りの5人は気を失っている摩緒に突きつけた
「獣王様が魔帝を殺さないなら、この儂が殺してやる」
鷹野が子分たちに向かって叫んだ
「殺れ!」
その瞬間、柊直虎が大声で叫んだ
「いつまで寝てるつもりなのヒルガデント!!!こんなザコどもに殺されても良いの?」
「あんたの最期って、この世界の脆弱な人間の子供の意思に勝てず、終いには、赤子の手をひねる位のザコ魔物に殺される訳なの〜〜〜もう笑っちゃうしか無いわね〜〜〜」
柊直虎はとことん魔帝を馬鹿にした言葉を吐き、大声で笑い出した
そんな狂気に似た行動の柊直虎に、鷹野たちは唖然とした
柊直虎に拳銃を突きつけていた子分の一人が叫んだ
「俺たちがザコだと〜〜舐めやがって!!!」
子分が拳銃を撃つ前に・・・
『バキィィィ!』
柊直虎の雷を纏った裏拳が子分の顎を捉えた・・・子分は雷撃と共に吹き飛び、地面に倒れ込んだ
「だからザコなのよ」
柊直虎が冷淡に突っ込んだ
そんな時、摩緒の身体がピクリと動いた
「ライハイル・・・テメエ・・・散々好き勝手な事・・・言ってくれたな」
途切れ途切れの言葉を放ち、身体から闇の覇気が漏れ出してきた
鷹野が焦った
「な、何をしている!!!は、早く魔帝を殺せ!!!」
子分たちも慌てながら拳銃を摩緒に向けた
「
魔帝化した摩緒が一気に闇の覇気を放出した
『ドォォォォォン!』
黒い衝撃波が放射状に広がり、鷹野をはじめ10人の子分たちを吹き飛ばした
「ぐあああああ!」
鷹野たちは宙に舞い、ゴルフ場の端まで吹き飛ばされた
柊直虎は不敵な笑みを浮かべた
「姿はボーイだけど、威圧と覇気は魔帝ヒルガデント様そのものね」
柊直虎は挨拶代わりに、意気揚々と魔帝化した摩緒に向かって渾身の雷の拳を打ちつけた
『バリバリバリ!』
雷を纏った拳が魔帝に向かって飛んだ
魔帝は闇の覇気を纏った両腕でそれを受けた
『ドガァァァン!』
衝撃で魔帝は後方に吹き飛ばされたが、踏ん張りを効かせて停止した
「ほう〜なかなかの拳の力だ、これだと余を満足させれそうだな」
魔帝が柊直虎を褒めた
「それで満足されちゃ困るわよ、魔帝様」
柊直虎は全身に雷の覇気を滾らせた
「殺るからには、全ての力を出し切るわ」
柊直虎は雷の波動を纏った、白き毛並みの虎型の獣人・ライハイルへと変態した・・・その筋肉隆々の姿に
「ライハイル・・・今世では、オスとして転生したようだな・・・前世とは違う戦いが出来そうだ」
今度は魔帝がライハイルに攻撃を仕掛けた
「はあああ!」
魔帝の闇を纏った右拳がライハイルの顔面に向かって飛んだ
ライハイルは首を反らしてそれを避け、雷を纏った左フックでカウンターを狙う
『ガキィィィン!』
魔帝は右腕でそれをガードし、すかさず膝蹴りをライハイルの腹部に放った
『ドガッ!』
ライハイルは腹部にダメージを受けながらも、魔帝の膝を掴んで投げ技を決めようとした
「させるか!」
魔帝は闇の波動で自分の身体を包み、ライハイルの手を振りほどいた
「雷帝爪撃!」
ライハイルが爪に雷を纏わせて連続攻撃を仕掛けた
『バリバリバリ!』
「暗黒障壁!」
魔帝は闇の盾でそれを防いだ
「重力操作!」
魔帝がライハイルに重力をかけて地面に押し付けようとした
「雷帝跳躍!」
ライハイルは雷の力で重力に逆らい、空中に跳び上がった
「雷鳴一撃!」
空中から雷を纏った踵落としを放つライハイル
「闇帝拳!」
魔帝も闇を纏った拳でそれを迎撃した
『ドォォォォォン!』
二つの力がぶつかり合い、巨大な爆発が起こった
お互いの拳と蹴り、魔法の応酬でどちらも一歩も引かず、ゴルフプレイ場も二人の激しいバトルで、芝生は剥がれ、ため池の水が津波ように激しく噴き上げ、木々が倒木し、破壊の限りを尽くしていく
その間に、コックは鹿型の獣人に変態し、素早くゴルフ場から逃げ出した
鷹野たちは鳥人に変態し、一目散に上空へと避難した
・・・・・
ゴルフ場から少し離れた場所で、鷹野たちの前には、赤い羽をばたつかせながら端正な顔立ちのスラっとした身体つきをした背広姿の40代男性が腕を組んで浮いていた
それを見た鷹野は驚いた後、嫌味たらしく言った
「これは、日企連の小鳥遊団長・・・いや、翼王フェニブル様、わざわざ大阪から」
翼王フェニブルは鷹野を蔑んだ目で見た
「ホーシャルさん、廃ゴルフ場を提供してもろて、ほんま感謝するわ」
鷹野は舌打ちをした
「いい加減な要請をしないで下さいよ」
「スザックスに、何時でも、この『翼王の首』を取って来いと、言っといてくれや」
翼王が忠告すると、鷹野は不敵な笑みを浮かべた
「スザックス様も、この世界に転生してくれて、本当に嬉しいよ・・・卑しい商人風情が『翼王』などと烏滸がましい」
鷹野が侮辱すると、翼王は溜息をついた
「・・・では失礼するよ」
鷹野たちは転移の魔法で、その場から消えた
翼王は、頭を抱えぼやいた
「この世界の危機に、なんで“前世の因縁”を持ち込んで来るんや・・・」
獣王ライハイルと魔帝ヒルガデントの激しいバトルを観戦しながら感嘆した
「まさか、魔帝ヒルガデントが転生していたとは思わんかったわ」
「この魔帝の強大な能力を、この世界の危機に活かさんといかんな」
翼王は呟きながら、二人の戦いを見つめ続けていた
下では、魔帝とライハイルの戦いがさらに激しさを増していく。果たして、この戦いの行方は・・・