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第17話「廃ショッピングモールの攻防」

廃ショッピングモールで、龍人形態の周防は2体の獣人と激しい戦いを繰り広げていた


蒼き狼の男の獣人・ヴォルクが闇の魔法で影の刃を生成し、周防に向けて放った


「シャドウブレード!!!!」


『バシュッ!バシュッ!』


黒い刃が連続で飛来する。周防は翼で空中に舞い上がって回避したが、今度は黄金色のピューマ型の女の獣人・ミャーンが光の魔法で追撃を仕掛けた


「ライトニングクロー!!!!」


『バリバリバリ!』


光を帯びた爪攻撃が周防の背中を掠めた


「くっ!」


周防は痛みに顔を歪めながら、氷の魔法で反撃した


「氷槍!!!」


氷の槍が2体に向かって飛んだが、ヴォルクとミャーンは浮遊魔法で空中に逃れ、廃ショッピングモールの構造を利用して奇襲を仕掛け


ヴォルクが天井の鉄骨から飛び降りて、闇魔術で具現化した巨大な影のハンマーを振り下ろした


『ドガァァン!』


周防は間一髪で横に避けたが、床に大きなクレーターができた


「この廃ショッピングモール内に、転移の魔法の使用を封印するとは・・・解くには、ゴテリア殿たちを倒すしかないなんて」


周防は焦りを感じていた・・・この争いを避けて、摩緒と柊直虎のいるゴルフ場に行けない


ミャーンが爪を舐めながら挑発した


「龍王様って、こんなに弱かったのかしら?」


「侮るな!!!ミャーン、龍王様の強さはこんなものではない!!」


ヴォルクがミャーンを諌めた


周防は自身の不甲斐なさに歯噛みした


「こんな時に、女性に転生した事を呪うわ・・・それに、この獣人2人、只者では無いわ」


その戦いを見守る、漆黒の獅子型の獣人ゴテリアが説明した


「獣人でも“神格属性”されている“フェンリル属性”と“バステト属性”だ・・・同じウルフ族やピューマ族とは段違いだ」


周防は驚いた


「たしか“属性”の持った者たちは、“誰にも従わない”と聞きましたが」


「この者たちも、私と同じ境遇だったのでね・・・」


ゴテリアはそれ以上答えなかった


その問答の隙に、ミャーンが攻撃を仕掛けた


「龍王様、あたしたちを格下と思って舐めてない?・・・ライトクロー・スラッシュ!!!!」


光を帯びた爪攻撃が周防の胸部を狙った


同時にヴォルクも攻撃に転じた


「ご覚悟を、龍王様・・・シャドースピア・バレット!!!!」


影の槍を連続で投げつける


「氷障壁!!!」


周防は咄嗟に氷の防御魔法で受けた周防だったが、勢い余ってショッピングモールの床に落下した


『ドスッ!』


床に激突した周防は、すぐに自分で回復魔法をかけながら立ち上がった


「ヒール」

温かい光が傷を癒していく


ヴォルクとミャーンも地上に降り立ち、周防に対し臨戦態勢を取った


・・・・・


その3人が対峙する様子を見るゴテリア・・・彼は心の中で呟いていた


(この平和で平穏な世で、魔帝が覚醒などされたら、この世が乱れる・・・龍王様、勇者はその阻止をしている・・・出来る事なら協力はしたいが・・・)


ゴテリアは自分の漆黒の手を見つめた


(幼き日、俺が毛の色が違うだけで、同族から両親共々迫害され・・・両親が殺され、独りで何とか生き延びたが、幼く力がなかったために死にかけた処を、ライハイルに救ってもらった・・・その恩を返したく、ライハイルの我儘を聞いたのだ)


腕組みしながら目を瞑り苦笑いを浮かべた


(ライハイルの奴、メスで俺と歳は変わらなかったのに、すでに“訳あり獣人”たちを従えて、魔獣狩りや強盗をやってのだから・・・『獣王』になるべくしてなったものだ・・・)


・・・・・


「これでは埒があかない」


周防は最大級の氷の魔法をかけた


「氷結破壊弾!!!」


『ドォォォォン!』


巨大な氷の爆発が廃ショッピングモールの一部を破壊し、見通しを良くした


奇襲攻撃ができなくなったヴォルクとミャーン


「これでは、地の利を活かした攻撃ができないじゃん」

ミャーンが嘆いた


「仕方がない・・・最大級の技で倒すしかない」

ヴォルクが焦った


「シャドウ・ファング・アサルト!」

ヴォルクが影の牙を無数に生成して周防に向けて放った


「ゴールデン・クロー・ストーム!」

ミャーンも黄金に輝く爪攻撃を嵐のように繰り出した


しかし、周防は二人の攻撃を受け流しながら魔法を発動した


「絶対零度!!!」


氷の魔法が2人の身体を包み込み、完全に凍結させて攻撃不能にした


「最初から、廃ショッピングモールを破壊して対戦すれば良かった・・・私は、早く楠木君の“魔帝様の覚醒”を防ごうと焦っていたようね」


周防は一息つき、今度はゴテリアを向いた


「後は、ゴテリア殿だけね」


しかし、ヴォルクとミャーンによって消耗し、残り少ない魔力も体力も、ゴテリア相手に通用するか不安でしかなかった


「龍王様、そのまま倒れて頂ければ良かったものを・・・」


ゴテリアが真剣な表情で呟き、いきなり風の攻撃魔法を放った


「ウィンド・ブラスト!」


「氷壁!!!」


周防は咄嗟に氷の防御魔法で受けたが、すでにゴテリアが横にいた


「疾風蹴!」


『ドガァァン!』


疾風を纏った蹴りが周防の脇腹を捉え、周防は遠くへ吹き飛ばされた


ゴテリアは炎の下級魔法で、身体を凍らされたヴォルクとミャーンを解凍した


「メラ」


氷が溶けて2人が動けるようになった


「2人とも御苦労だった・・・安全な場所で体を休めろ」


ゴテリアが命令すると、2人は反論した


「私たちはまだ闘えます!!!」


「無理するな、解凍したばかりの身体で思い通りに動けないだろ」


ゴテリアが諭すと、図星を突かれた2人は悔しがりながらも答えた


「わ、分かりました」


2人は安全な場所へと移動した


遠くへ飛ばされた周防を一瞥しながら、ゴテリアは言った


「もういい加減、静かにしてもらいましょう」


ゴテリアは周防に向かって強襲し、周防は咄嗟に


「氷刃乱舞!!!」


乱舞する無数の氷の刃を、ゴテリアに向けたが


「無駄だ!!!」


身体中の疾風の覇気を放出し、無数の氷の刃を破壊し


周防の間合いに入ると、風の波動を纏った拳と蹴りを繰り返し


『ドガッ!バキッ!ドガッ!』


周防は防御しきれず、ゴテリアの攻撃を受けて倒れそうになった


「これで良いのです・・・そのまま倒れて下さい」


ゴテリアがトドメの蹴りを入れようとした時・・・周防の姿が消えた


「な、何だと!!!」


空振った蹴りで体勢が崩れそうになるが、すぐに体勢を整えたゴテリア


ゴテリアの目に入ったのは、倒れそうに疲弊した周防を肩に担いで立っている博輝・・・勇者エルダの姿だった

「間に合った・・・」


博輝は安堵の表情を浮かべながら、ゴテリアを見据えていた


「勇者エルダ・・・」


ゴテリアは静かに呟いたのだった


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