廃ショッピングモールで、倒れそうになった周防を肩に抱えて、ゴテリアと対峙する博輝・・・勇者エルダ
「ありがとう、大丈夫よ」
周防は博輝の肩から離れた
「三重騎でも勇者の足止めはできなかったか・・・」
ゴテリアは、至って冷静に呟いた
「それより何故、真っ先に魔帝ヒルガデント様のいるゴルフ場に向かわなかった?」
ゴテリアが問うと、博輝は肩をすくめた
「レディーを置いてくには行かないでしょ・・・女性1人に対して3人ではね〜〜」
博輝がゴテリアに皮肉ったが、周防は顔を赤らめて抗議した
「高校生にレディーと謂われるほど若くないわよ!!!」
博輝は苦笑いした
ゴテリアは博輝の皮肉に
(戦うものに男女も無いだろ・・・)
と、正論で返そうとしたが
周防の横やりで、なんとも言えない表情のまま無言になった
博輝とゴテリアに流れる微妙な空気に、周防は戸惑った
「な、何ですの?」
「周防先生は充分にお若いですよ」
博輝が誤魔化すと
ゴテリアは周防に嫌味を言った
「前世では、魔帝四凶王の中で、他の王たちとは親子ほどの差がありましたからね」
「今世では一番若いわよ!!!」
周防は抗議したが、ゴテリアは周防の抗議を無視して博輝に忠告した
「時間が無いのではなかったのか?勇者エルダよ」
博輝が懇願した
「魔帝を覚醒してしまったら、この世界が大変になる!!!だから、転移の魔法の封印を解いてくれ!!!!」
ゴテリアは魔帝の覚醒に一瞬迷ったが、決意を固めた
「ライハイル様の邪魔はさせない」
ゴテリアは拳と脚に風の覇気を纏って博輝に立ち向かった
博輝も光の剣を具現化して応戦した
「ハアアア!」
ゴテリアの風を纏った右拳が博輝の顔面に向かって飛んだ
『ガキィィィン!』
博輝は光の剣でそれを受け止めた、金属音のような音が響く
「疾風連撃!」
ゴテリアが連続で拳を繰り出した
『ドガガガガ!』
博輝は光の剣を巧みに操り、全ての攻撃を受け流した
「聖光斬!」
博輝が光の剣を振り下ろすと、光の刃がゴテリアに向かって飛んだ
「風壁!」
ゴテリアは風の魔法で壁を作り、光の刃を防いだ
光と風がぶつかり合い、衝撃波が周囲に広がった
「竜巻拳!」
ゴテリアが回転しながら拳を放つと、小さな竜巻が発生した
博輝は空中に跳躍してそれを避けたが、竜巻は廃ショッピングモールの壁を破壊した
「聖光連弾!」
空中から博輝が光の球体を連続で放った
ゴテリアは素早い動きでそれらを避けながら、博輝に向かって跳躍した
「風神蹴!」
風を纏った蹴りが博輝を捉えようとしたが、博輝は光の剣でそれを受け止めた
『ガギィィィン!』
剣と蹴りの鍔迫り合いが空中で繰り広げられた
光の魔法と風の魔法の応酬、その戦いの波動が廃ショッピングモールの壁や床を次々と破壊していく
『ドォォォン!ガシャァァン!』
お互いに引けを取らない戦いに、安全な場所から見ていたヴォルクとミャーンは感嘆した
「す、凄い・・・」
「これが本当の戦いなのね・・・」
二人は博輝とゴテリアの戦いを見守っていた
周防も安全な場所に避難し、2人の勝負の行方を見守っていた
「流石は、獣王ライハイルに匹敵する強さだ、ゴテリア」
博輝が感心した
「あの三重騎を退けるだけはある、勇者エルダよ」
ゴテリアが褒めた
二人は一瞬距離を取り、互いを見つめ合った
「済まないが、これ以上時間は掛けられない」
博輝はゴテリアから離れ、上空に舞い上がった
博輝は空中で光を集束させ
「聖光極大砲!」
最大級の光の攻撃魔法を繰り出そうとした
「そうはさせるか!」
ゴテリアは地上から風の攻撃魔法を仕掛けた
「大風刃!」
巨大な風の刃が博輝に向かって飛んだ
「聖光盾!」
博輝は光の剣を使って光の防御魔法で相殺した
「周防先生、逃げて下さい!」
博輝が叫ぶと、周防は急いで上空に避難した
「喰らえ!聖光極大砲!」
博輝の最大級の光の攻撃魔法がゴテリアに向けて放たれた
『ドォォォォォォォン!』
眩い光が廃ショッピングモール全体を包み込んだ
「風神護体!」
ゴテリアは身体に風の魔法の防御魔法を纏った
しかし、博輝の魔法の威力は凄まじく、廃ショッピングモールの大半が破壊された
『ガラガラガラ・・・ドスン・・・』
瓦礫が崩れ落ちる音が響いた
煙が晴れると、ゴテリアはその魔法に耐えて立っていたが、そのまま崩れ倒れた
「ゴテリア様!」
同じく上空に避難していたヴォルクとミャーンが、急いでゴテリアを介抱した
博輝と人間に戻った周防が、ゴテリアの前に降り立った
「ハイ・ヒール」
博輝がゴテリアたちに回復魔法をかけた・・・温かい光が三人を包み込み、傷が癒されていく
回復したゴテリアたちは困惑した
「何故・・・敵に回復魔法をかけた?」
博輝は穏やかに答えた
「別に敵対しているわけではありませんから・・・あなたたちも、ライハイルへの忠義で動いているだけでしょう?」
「早くゴルフ場に行きたいんです!!!魔帝の覚醒を止め、摩緒を救わなければ!!!」
博輝が懸命に懇願すると、ゴテリアたちは人間の姿に戻った
「我々の負けだ・・・」
大岩が認めた
「転移の魔法の封印を解こう」
大岩が手を上げると、廃ショッピングモール全体を覆っていた魔法の結界が消えた
「ありがとうございます」
博輝が感謝した
「我々も同行して良いか・・・直虎様がどうなってるのか、摩緒少年も無事なのか心配だ」
と、大岩が申し出た
「お願いします」
と、周防は頷いた
「それでは、転移の魔法で魔帝と獣王の対戦場へ」
大岩が移転の魔法を発動させ
「集団転移」
青白い光が5人を包み込み、廃ショッピングモールから消えたのだった