スパロウの逃げた背中を追っているわけではないけど、しかし一本道しかないので私はその道を歩く。
坑道から見える出口は真っ白の明りになっていた。私は急ぎ足で進む。
ゲームではこの先に広がる光景をムービーが流れる。広大な世界。幾千数多なダンジョン。ダンジョンの数以上の冒険。そう思わせる世界が広がっていた。
私はダンジョンから一歩踏み出した。
やっぱ、世界って広い。
ここから遠くまで見える森林。それが途切れては草原が広まっている。ポツポツと見えるは村とダンジョンになる鉱山擬き。ここはいわば盆地であり、草原の奥にある禿山を越えれば、更なる土地が見えるはず。ゲームとしては序盤のステージ。ここで様々なダンジョンをクリアしていくんだよね。
初見プレイだとゲートキーダンジョンとかわからないし、なんなら序盤だと24あるダンジョンでも3つしかない上に、攻略難易度が高いから後回しにしがちなんだよね。
世界を眺めて、少し廃坑へと目を向けて、改めて前を見る。
朽ちても鉱山。ここは山の中腹にあり、周りは木々で生い茂っている。切り払われた広場があり、洞窟から見て右には舗装された道がある。舗装されたとは言っても、踏み固めてきた道。ボーボーと生えた雑草はここにはあまり人が来ない様にも思えた。
確か、と私は回りを見渡す。
あった。広場の隅っこに小さな畑が一つ。
「うげ。やっぱ収穫済みかぁ」
回復アイテムとして貰えるキノミが採れる。今思えば、ここってチュートリアルドワーフが耕してた畑かもしれない。たった一人の監視のために配属された一人ぼっちなドワーフ。顔の知らないその人に私は静かに同情をする。
さてと、このまま道なりに進んで最初の村に行くのもありだけど。
私は良い道を知っている。なんせ、RTAもやり込むほどのプレイヤー。
私は右にある道ではなくて、その逆。左の道なき道へと足を運んで行った。