レベッカと話した後、クロウに尋ねてみた。
「どうして私を助けに来たの?」
クロウは私を見つめる。意味がわからないようだったが、やがて答えた。
「ジェシカがいたほうがいいからだ。――これは答えになっているか?」
私はクロウに飛びついて、泣きながらうなずいた。
「うん、うん」
クロウはうなずく私の頭を撫でてくれた。
私はその後、リバーにも尋ねた。
「なんで助けにこようとしたの? ぜったいに間に合わなかったよ。――私、リバーはそういうバカなことをするやつじゃないって思ってた」
リバーは眉根を寄せるとふい、と顔を背けた。
「買い被ってんじゃねぇ。俺はあの連中ほど大人ぶっちゃいねーよ」
確かにそうだろうが、だからといって助けられる可能性なんかないのになぜ、と思ったらリバーが再び答えた。
「……俺は、後悔するような生き方はしたくねぇ。周りからバカにされよーが自分の思った通りに生きる。簡単に死んじまうような世界なんだ、なら後悔しながら死にたくはねーよ」
私は目をまたたいた。実際、そう簡単にはいかないだろうけど、少なくともリバーは無駄だとしても自分まで巻き添えになって死ぬ可能性があろうとも、私を見捨てないほうが後悔しないらしい。
私が笑うと、リバーが嫌そうな顔になった。
「なんだよ?」
「ううん。納得しただけ。私もそういうふうに生きようって思った」
後悔しない。私は、私がいたほうがいいと言うクロウをずっと守って一緒にいる。クロウは、私の大切な友達だから。
そして、リバーも。
「ありがとう」
私が礼を言うと、リバーはぶっきらぼうに言った。
「なんもしてねーよ。お前が言うように俺は間に合わなかったし、クロウみたく、自分のガスマスク差し出してまでは助けようは思わなかったしよ」
「それでも。ありがとう。私も、ガスマスクは差し出さないし間に合わない程度には助けに行くよ」
「嫌味かよ!」
私がそう返すとリバーが憤った。
アッシュには尋ねなかった。アッシュは私ではなくクロウを探していたのだとわかっていたから。
この当時の私は、ひそかにアッシュに憧れていた。
アッシュはレベッカからクロウの子守を言いつけられていたが、リバーや私の面倒もみていた。『カッコいいお兄ちゃん』であるアッシュに憧れたのも必然だった。
だけど、一緒にいるうちにアッシュの一番がクロウなのがわかり、淡い恋心は消えた。
アッシュがクロウを好きならまだ良かった。そうではなく、『何をおいても何を犠牲にしても救うべき一番』とアッシュが決めているのがわかったのだ。
そんな男に恋心を抱いて犠牲にされるのなんてまっぴらだ。今度は両足を失うどころか命を失うだろう。
子どもには似合わない冷めた考えで気持ちを切り替えてしまった。
――だから、自分がいたほうがいいからという気持ちだけで単独で救出に向かい、自身のガスマスクを差し出してくれたクロウを、私は好きになった。
あるとき、
「……アッシュって、ホントにクロウのことが一番だよね」
ってつぶやいたらクロウに聞かれてしまった。
「アッシュは母に惚れているからな」
そうクロウが返してきたので、目が点になった。
「…………え?」
クロウが私を見て首をかしげた。
「アッシュは、母レベッカに惚れている。だから、娼館に行って選ぶのも母に似た女性だし、私を守るのも母が頼んだからだ」
……すごいことを聞いてしまったんですけど!?
「へぇえー! そうなんだ!?」
つい、目が輝いてしまうのは、ちょっと恋バナに飢えているから。だって、私たちじゃ恋バナにならないじゃん? 誰も彼もどれもこれも恋愛には縁遠い感じだから、ついつい興味津々になっちゃう。まぁ、私はクロウが大好きですけどね!
「隊長は、年下はどうなんだろ?」
私はクロウに探りを入れたら。
「守備範囲外だそうだ」
あっさり返ってきた!
うぶぶ、色男のアッシュもレベッカ隊長相手じゃ形なしだな~。