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第42話 入学当初 ③

『戦闘開始』

 その合図が出て、三人は飛び出していった。


 クロウは砦のコンソールを操る。

 ――フリをしているが、実際はすでにクロウのブレイン内で情報取得を行っている。

 三人への連絡も、ナンバー99内で使用していた専用ネットワークで、ピアスをルーターとしてブレインに直接データを送り込んでいる。

 こんなことをしているので対戦する生徒たちは気の毒なのだが、敵の教官たちも裏で手を組み全小隊でクロウたちを殲滅しようとしているのでお互い様である。


「ふむ、迎撃システムが封印されているな。通信はかろうじて使えるか?」

 もとより備えつけの通信は情報かく乱のためにデタラメの会話を流す予定だが、あからさまに傍受されノイズがひどいのにはクロウも呆れた。


『マップを送信する』

 クロウから三人へVR戦場のマップが送られてきた。

『オイ、事前に送られてきたマップと全然違うじゃねーかよゴラ』

『……まぁ、俺たちは嫌われているからな。敵全小隊、俺たちの砦に向かってきているぞ』

『倒しやすくて助かる~』

 ジェシカがおどけた声を出す。

『ナンバー09、俺は予定通りC3を通過しつつA1に向かう……けど待てやコラ。この赤い凸ってなんだよ?』

 リバーがマップを睨んでいぶかしんだ。

 クロウが答えた。

『移動式大砲のようだ。――占拠され操縦して砦を撃ってこられるとめんどうなので、まず破壊してほしい。私も出来るが、恐らくアッシュに拳骨を喰らう案件だ』

『だろーな』

 リバーがため息をついた。

『ナンバー19はB4に向かえよ。俺……ナンバー09はD4を経由して途中の林を突っ切ってD3に向かう。ナンバー29は……動きはA6の連中が早いか。D6辺りでしとめてから俺らが取り残した連中を始末しろ』

 リバーが指示を出す。戦闘中は各自ナンバーで呼び合っている。ちなみに、自分のナンバーは空いている好きな番号をつけていいことになっていた。


 リバーがナンバー09。

 ジェシカがナンバー19。

 キースがナンバー29。

 そしてクロウはナンバー00だった。


『ナンバー19、ラジャー』

『ナンバー29、ラジャー。ナンバー19は破壊したのち残りの殲滅を頼む』

『ナンバー19、ラジャー。……それにしても動きにくいマップよね。私たちに不利すぎない? 全小隊がうちを攻撃出来るような仕組みじゃないのコレ』

『VR演習の監督教官が選んだ。傍受や迎撃システムのロックもそうだ。つまりは、ソイツが真の敵だ』

 クロウがきっぱり言うと、全員が肩をすくめた。

『ナンバー00、お手柔らかにね?』

 ジェシカがクロウに言うと、それぞれ散った。


 他の小隊は、全員が砦を出てクロウの守る砦へ向かっていた。

 この場合、クロウの砦から一番遠い位置にいる砦が有利だ。

 ナンバー99以外の三小隊は協定を結び、全員でまずナンバー99の砦を落とすことになっている。とはいえ、クロウの砦から一番近い砦にいる小隊が真っ先に戦闘に入るのは必至で、あとから参戦すればするほど生き残りの確率が増える。

 砦は四隅に作られているので、ナンプラー9の砦の対角線上にある砦が有利だ。そのため、いちばん最初に戦闘に入った砦の小隊を支援し、残った小隊が裏をかいて砦を攻撃する、というふうに計画を組んだ。


「立てこもり作戦を使ったらどうする?」

「卑怯者ってさんざんヤジ飛ばしてやるさ。奴らの中に短気そうなのがいただろ」

「砦の耐久値も評価に入るから、最悪全員生き残ってもやつらが最下位でしょ。砦の防衛システム、ロックかかってるんだしさ」

 敵の小隊は通信でやりとりしつつ(それをクロウに傍受されているのも気付かず)向かった。


『ナンバー09、ポイントに到着し大砲を占拠したぜ。これからA1の砦を破壊してくっから』

 リバーが報告すると、クロウが答えた。

『よろしく頼む。ナンバー19、そちらも占拠出来そうだろうが、罠を設置後F4……いやF5へ』

『ナンバー19、了解。……え? ナンバー00、大丈夫? 間に合わせるけど最悪攻撃されるんじゃない?』

 ジェシカはクロウの指示を聞いて不安になった。バレない程度に脚を速めたが、予測より相手の移動速度が速い。

『迎撃手段はある。拳骨案件ではないから安心しろ』

 クロウの答えを聞いてジェシカが笑った。

 が、すぐに顔を引き締め、大砲を見つけると手早く罠を設置し、急いで走った。


          *


 キースは魔術も使えるが、基本は有機機械化された拳での肉弾戦を得意としている。

 脚力ではリバーやジェシカほどのスピードは出ないが、それでも通常の人間よりは速い。ブレインを駆使し、最適に動かして最大限の効果をあげている。

 そして、この森林マップではキースの得意技が最大限に活かされる。

『ナンバー29、ポイントに到着。ここで迎撃する』

 報告してから、罠を設置する。素人相手にはじゅうぶんだろう。

 キース本来の実力を出せるのならどんな場所でも余裕だが、限定されているとなると戦術を駆使して勝ったフリをしなくてはならない。

 そうなると、何もない平地だとかなり不利だったのだが、道幅の狭い森林なので、キースの得意技をもってすれば、かなり楽に戦える。


 A6の砦からやってきた第四小隊が走って向かってくる。

 教官から送られてくるデータを見て確かめ、斥候役の少年が索敵魔術でキースを発見した。

「連中の一人がこの先で待ち構えているよ」

 いったん止まると全員が武器を手にし、合図とともにキースのいる位置に殺到する。

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