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第21話 子猫たちのお世話

 弟妹が生まれてから一年がたち、僕は五歳になった。


 今日は僕とガルガルで、弟妹たちの面倒をみながらのお留守番だ。

 最近、ママも聖樹の若木を各地に届ける仕事を再開した。


 今日もママは聖樹の若木を届けに忙しく働いている。


「なぁなぁなぁ」

「おちつけおちつけ。すぐにお昼ごはんができるからな?」


 僕は弟猫によじ登られながら、大きな魔鳥の肉を焼いていく。


「それにしても、だいぶ重くなったなぁ。まだ赤ちゃんなのに」


 弟妹たちは一年でだいぶ大きくなった。みんな体長は五十センチぐらいある。

 大きさ的には成猫ぐらいあるけど、成長途上。まだまだ子猫だ。


 まだ、お肉の他にママのお乳を飲んでいるぐらいである。


「なぁなぁなぁ」

「だから、まっててな? アオは魔鳥の肉は焼いた方がすきでしょ?」


 僕の肩に登ってせかしてくる弟猫のアオに言う。


「なあ!」

うむにゃあノエルは魔鳥の肉を焼く達人だからなにゃむにゃあにゃあ?」


 アオはブルータビーの雄で、全体的に青みが強いので、僕がアオと名付けたのだ。

 好奇心が旺盛で、いつも好き放題遊んでいる。


 そして食いしん坊で、肉は焼いた方が好き。


「……みゃ」

「ほら、クロみたいにおとなし……こらにゃ! クロ! それはアオのうんちだからな?」


 なぜ弟猫のクロはうんちに興味を示すのか。だから、うんちは放置できないのだ。


 クロも僕が名付けた。名付けの理由はブラックタビーで黒っぽいからだ。

 クロは静かで大人しいと思いきや、とんでもないことをしでかす傾向がある。


「みゃ?」

「みゃ? じゃない! だから、アオのうんちからはなれてな?」

「みゃあ~」


 クロはアオのうんちを仮想敵に定めたのか、跳びかかろうとする。


「まてまてまて。ガルガル、アオのうんちを……」

「…………ぁぅ」

「寝てる……しかたない。ガルガルも赤ちゃんだからな……」


 さっきまでガルガルは弟妹たちと遊んでくれていたのだが、眠ってしまったようだ。

 体は大きくても、赤ちゃんなので仕方がない。


 僕はご飯を作りながら、清浄の魔法を使って、アオのうんちをきれいにしておいた。


「みゃ!」


 うんちが消えて、驚いたクロが巣の中を走り回る。


「クロ、巣から出たらダメだよ~。それにしても、シロ。しずかだな? ちゃんといるか?」

「……にゃ?」

「いたか。よかったー」


 妹猫のシロはうつ伏せで寝ているガルガルの背中の上で大人しくしていた。

 シロはシルバータビーホワイトで、色素が全体的に薄い。一番手がかからない。


 静かすぎて、いるかどうか不安になるほどだ。


「にゃ」


 シロは静かにやってきて、僕の尻尾にじゃれつき始めた。

 僕はママの作った猫の着ぐるみを着ているので尻尾があるのだ。

 シロは本当に手がかからない妹である。まるで小さい頃の僕のようだ。


「それにくらべて……」

「なぁぁぁぁぁ」

まてまてまてまてにゃにゃにゃ! アオ、なぜ、兄の肩の上でふんばっているのだ?」

「なぁ?」

「なぁじゃないが? うんちするなら、といれでするの!」

「なぁ~」


 仕方ないなーと言った表情で、アオはトイレに向かった。


「さっき、うんちしたばかりなのにな?」


 アオもクロも小さい頃のガルガルみたいだ。本当に手がかかる。


「なぁ~、なぁ~」


 トイレでうんちをしたアオがどや顔でアピールしてきた。


「うん、アオ、うんちできてえらいな~」


 自慢げなアオを褒めてやる。


「クロ、またうんちに興味をしめすな!」

「みゃ?」

「アオのうんちがとくべつ臭いのがきになるのか? クロのうんちも同じくらい臭いぞ?」

「みゃあ~みゃ!」

「くさくないって? いや、クロのうんちもおなじくらい臭い」


 そういいながら、僕は清浄の魔法を使ってうんちを掃除した。

 もちろん、魔鳥の肉を火魔法であぶるのは続けている。


「よし、できた! みんなー。ごはんだぞー」

「がう!」

「ガルガル、起きたか。いっぱい食べるといい」


 目覚めたガルガルは巣の端っこまで何度か往復してお皿を咥えて運んでくれる。

 自分用の大きな皿と僕のお皿と、弟妹用に小さめの皿三枚だ。


「ありがと、ガルガル」


 僕はガルガルのお皿にでかいお肉の塊を入れていく。


「がう~」

「ほれ、アオ、クロ、シロも……」


 弟妹たちはまだ小さいので焼いた肉をほぐしてから、皿に入れる。


「「「にゃむにゃむにゃむ」」」


 弟妹たちは一斉にうまいうまいと言いながら、お昼ご飯を食べ始めた。

 それを眺めながら僕も食べる。


「うむ、うまい……皮が……パリパリだし肉は柔らかいし、肉汁もたっぷり……うまい」

「がふがふがふ」


 ガルガルもうまいうまいと言っている。



 お昼ご飯を食べ終わると、お昼寝の時間だ。

 弟妹たちとガルガルと一緒に横になってゴロゴロする。


「なぁぁ」「みゃみゃー」「んにゃ」

「ほれほれほれ。こうだぞ~」「わぅ~」


 じゃれついてくる弟妹たちをひっくり返したりして遊んでやった。

 ガルガルは弟妹たちに甘噛みされまくっている。

 痛そうに見えるのだが、全く痛くないらしい。


 弟妹たちは、僕には甘噛みをしてこない。

 甘噛みするたびに、兄に歯を立てるなと叱ってひっくり返して教育した成果だろう。


 騒ぐ弟妹たちの相手をガルガルといっしょにしていると、弟妹たちが眠りに落ちる。


「がう?」

「ん、ガルガルおねがい。気をつけてな?」

「が~う~」


 ガルガルが任せろと言って、見回りをするために巣から出て行く。

 最近では僕とガルガルは一人で見回りすることをママに許されたのだ。


 午前中は僕が見回りしたので、午後はガルガルの番である。

 ちなみに朝と夕方は、弟妹を連れて一緒に見回りだ。


 ガルガルを見送った後、寝ている弟妹たちを優しく撫でる。

 弟妹たちは本当に可愛い。


「神はてんさいだな?」


 神は、きっと子猫を人に愛されるようにデザインしたのだろう。


「おっきくなるんだぞー」


 弟妹たちはママみたいな立派な猫になるはずだ。

 その日が楽しみだ。

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