翌日、お父様が急に変える事になり、私やソフィアやマナーハウスの皆は、朝から見送りの為にマナーハウスの前まで出ていた。
なんでも王都では私とヴィルの話題でもちきりらしい…………教会が密かに人身売買をしていた事は瞬く間に王都に広がり、聖ジェノヴァ教会は対応に追われているとの事。
ヤコブ司祭は王都に戻ってくるように言われて戻ったけど、結局捕まったヴェットーリ司教の証言でヤコブ司祭も即日捕まり、今は二人の処分をどうするかの議論がなされている最中らしい。さすがにそんな時にお父様が陛下の側を離れているわけにもいかない、というわけだ。
王妃殿下の母国と取引をしていた事も相まって、王都ではてんやわんやらしいので、直ぐに領地を出る事になった。
私はお父様が領地を去る前にここの教会をどうするべきか、相談してみた。以前ヴィルが提案してくれた、領地の教会は修道士たちが管理し、修道院で身寄りのない子供たちを預かる孤児院の役割を持たせてはどうか、という話をしてみた。
するとお父様は「素晴らしいね」と褒めてくださり、私がいいと思う方針でやってみたらいいと背中を押してくれたのだった。
「……では、お父様。お気を付けて帰ってくださいね」
「うん。王都で待っているよ。危ないからゆっくり帰ってくるんだよ?殿下がいるから大丈夫だとは思うけど……」
いつでも一番に心配してくれるお父様を皆で見送り、オルビスやテレサ達が来るのを待つ事にした。
~・~・~・~
そしてお父様が王都に発ってから小一時間くらい経った後、オルビスとテレサがあの時の子供たちを連れてやって来た。
「こんにちは~!オリビア様、皆さん……あ、ソフィア!」
一番乗りで来たのはソフィアと一緒に捕まっていたパウロだった。この子は本当に元気で、私たちに挨拶をしている途中にソフィアを見つけて、一目散に駆けつけていた。随分仲良しになったのね~微笑ましい。
「パウロ、こんにちは!」
ソフィアも嬉しそう…………やっぱり同じ年ごろの子供たちと遊ぶのって楽しいわよね!パウロの他にもナタリーという女の子とダコタという男の子も来ていた。皆一緒に捕まった仲間だから、ちょっとした絆みないなのが生まれたのかしら。
「オリビア様、王太子殿下、ロバート様もお招きいただき、ありがとうございます!」
「こんちは!来てあげたよ」
オルビスとテレサも相変わらずで、二人ともわざわざ身なりを整えてきてくれたのが分かる。というのも公衆浴場は使えるようになったし、教会の扉は開かれ、修道院の修道士や修道女達が手分けして住む家のない者の世話をしてくれているのだ。
もちろん公爵家からも衣服や食料などの支援に加えて、金銭的な支援もロバートが手配してくれている。
それもあり、貧民街で暮らす人はほとんどいなくなった。
病気や怪我で動けない者のお世話なども必要だから、教育機関よりも先に医療機関の方を整えるべきかしら。
教会の者がいなくなって、昔のようにここはこれからもっと良くなっていくわね…………良かった。皆が揃ったところで、大人は応接間でゆっくり話をしながら、子供たちは庭園で遊ぶ形になった。
「あの司祭がいなくなったから、また教会に行きやすくなったし、凄く快適になったよ!」
「修道士の方達がとても協力してくれて……今までヤコブ司祭に抑えつけられていた部分もあったようで……神に仕える身でありながら、申し訳なかったと言ってくださいました」
皆、オルビス達と同じように被害者のようなものなのに……救いを求めている者を救う事が出来なくて、苦しかったでしょうね。ましてや自分たちの住む修道院のすぐそばで、子供たちが捕まり、売られていただなんて…………
今はもう自由に出来るでしょうし、きっと頑張ってくれるわね。
「その修道院なんだけど、教会を表向き修道院長に管理してもらって、修道院では幅広い人々を住まわせる事が出来るようにしたいの」
「それは助かります。しかし今は修道士や修道女の方々が色々と頑張ってくれていますが、段々と人手が足りなくなりそうですね……」
修道士の方々も四六時中人々の世話をしているわけにはいかないものね……
「じゃあ住んでいる人たちで協力して、出来る事は自分たちでしていく形にしたらどうかしら。料理もそうだし、掃除や洗濯なども皆で手分けして分担していけば、修道士の方々も祈りの時間を持てたりするんじゃないかしら……」
「いいんじゃない?あたしはむしろ修道院で働きたいよ!体力有り余ってるし、子供たちの世話も好きだからさ~」
「いいわね!テレサは子供たちのお世話が上手だし……修道院には公爵家から、物資や金銭的にも永続的に支援していくわ。そういう面での心配はしなくて大丈夫だと思う。働いて稼ぐ事が出来るようになれば、自分で生計を立てられる者も増えていくと思うし、仕事として割り振ってもいいわね……」
未来について話し合える事がこんなに嬉しいなんて……テレサも生き生きとしているし、オルビスも苦しい表情をしなくなって、皆未来に向かっていってる感じがする――