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第52話 議会での議論


 無事に公爵邸に着いてから四日目――――



 私は庭園でのんびりソフィアと一緒にお茶を飲んで、羽を伸ばしていた。


 領地から帰ってから、マリーは荷物などの片付けに忙しそうだし、ヴィルは一旦王宮へ戻って色々な報告があるらしくて……お父様は教会や王妃殿下の件で忙しそうだし、私とソフィアだけがのんびり…………何だか申し訳ない気分ね。



 ソフィアの件はお父様が「遠縁の親戚の子が両親を亡くしたので引き取った」という設定で、正式に公爵家の養子にしてくれた。


 私とソフィアは晴れて姉妹となる…………ソフィアはこれから淑女教育が待っているけど、ソフィアならきっと大丈夫ね。



 さっそくお茶の時のマナーを教えながら、一緒にお茶をしているわけだけど、まだ左腕が完治していないから無理させないようにしないと。



 教会の件は本当に大揉めのようで、司教と司祭をどのような刑に処するか、貴族派と王族派で意見が分かれているらしい――


 貴族派は王妃殿下の事もあるから刑を軽くしようと目論んでいるようだけど、よりにもよって人身売買をしていたので……刑を軽くする事は出来ない、という王族派とで真っ向から意見がぶつかっている。



 ヴィルはこの件を領地で見てきたから、証言者として議会にも顔を出している。



 王太子に見られてしまったので、言い逃れする事は出来ないだろうけど…………ここで王妃殿下が出てきたら、刑にも影響が出てしまったりするのかしら。



 そんな事を考えていると、マリーが建国祭の話題を振ってきた。



 「あと一月半ほどで建国祭ですね~~王太子殿下がどんなドレスを贈ってくれるか、とっても楽しみです!」



 マリーは本当に心から楽しみにしている雰囲気で、色めき立っている。私もドレスを着てみたいとは思うけど、贈られるって事はきっとヴィルの色が濃いドレスって事よね?



 なかなかハードルが高いわ…………抵抗なく着る事が出来るかしら……



 「え、ええ……そうね…………建国祭の10日前には届くと言われたけど」


 「ドレスは私たち侍女にとっても眼福なので、早く見たいです~」


 「そう言えばマリーは建国祭には出席しないの?ロバートって男爵なんだからマリーが出席してもいいと思うのだけど……」


 「わ、私はお嬢様の支度のお手伝いがありますので、行きませんよ!それに社交界は苦手ですし……公爵家に仕えると決めたので」



 …………マリーは私の二個年上だから年頃なのに社交界にも行かず、公爵家に仕えているなんて勿体ない!



 こんなに明るくて可愛いのに…………中身が30代だから可愛いと思ってしまうけど、一応私の方が年下なのを忘れてたわ。



 「それにそういう夜会に行くには、お相手がいないと行けませんから……」



 そう言われればそうだった。夜会などに出席するには男性のパートナーが必要不可欠……ゼフは?って思ったけど、ゼフは当日護衛の役目があるから無理だものね。



 領地から帰ってきて、ゼフはヴィルの元に戻るのかと思ったのだけど、ヴィルが私に対する王妃殿下の動向を心配して、ゼフはそのまま公爵邸を護衛する役目を与えた。


 今も庭園の隅にひっそりと立っている…………ソフィアもゼフがそのままいてくれて安心したみたいで、時々ソフィアの話し相手になっているゼフだった。





 ~・~・~・~




 その夜、お父様が帰ってきて、夕食の時に議会で話し合った内容を話してくれた。



 「司教たちが捕まってかなり経っているのになかなか刑が決まらないんだ……王妃殿下が粘り強くて、手強いったら…………」


 「自分の母国へ売られていたというのにまだ強気なのですか?」


 「うん…………まぁ王妃殿下が関わっていた証拠はないからね。それにあの司教は王都ではかなりの信者がいて、その者たちによる司教の刑を軽くする運動みたいなのを王都でやっていたり……強引に事を進めてしまうと反発もあるから、聖職者を裁くのは大変なんだ……」


 「そういうのもあって、教会は強気なのですね……民にも教会を拠り所にしている者も多数いますし」



 信じる者は救われるって言うけど、救われない者を多数他国に売りに出しているという非人道的行為は許してはならない――



 「それでもあと10日以内には刑が決まると思うよ。あと一月半で建国祭があるから、建国祭から7日間は国中がお祝いムードになるからね。その準備もあるし、建国祭の期間は議会も開かれないからそれまでに結論を出さないと……いつまでもこの議論を繰り広げてばかりはいられないから」


 「そう、ですわね。ヴィルは議会に顔を出しているのですか?」


 「もちろん来ているよ~~前はあまり発言をせず見守る形だったんだけど、今回は陛下以上に発言しているし、王妃殿下とやり合う場面もあってびっくりしているよ」


 「王妃殿下と?」


 「殿下は王妃殿下には萎縮してしまっていたところがあったんだけどね……堂々と発言している姿に陛下も目を細めていたよ」



 お父様がちょっと嬉しそうだわ。何より陛下が嬉しそうなのが伝わってくるわね……何歳になっても子供の成長って嬉しいものだものね。



 あんな毒親に負けてはダメよ……私は堂々と発言するヴィルの姿を想像して、少しだけ嬉しくなったのだった。




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