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第7話

 警備兵のおっちゃんから離れた俺は、とりあえず今日泊まるところを確保しようかなあ、と考える。無駄遣いはできないので一泊だけ。


 そして俺は、酒場と警備兵のおっちゃんのいる場所の丁度間くらいに、ベッドマークの宿屋の看板があったのを思い出す。確か素泊まり小銅貨11枚と書いてあったな。


 宿屋に入った俺は、店番の女に素泊まり一泊を頼み、大銅貨1枚小銅貨1枚を支払い鍵を預かった。質素な宿なので、飯は自分で外で食うなり買ってくるなりしないといけないらしい。


 店番の女は気だるそうな20代後半くらいのソバージュに目元に泣きぼくろのある退廃的な雰囲気のある女だった。俺と視線も合わせず、特に興味もなさそうな無気力な感じ。俺が部屋にいようがいなかろうが、全く気にしなさそうだ。


 注目されないのことが俺にとっては一番楽でありがたい。ここはいい宿だ。


 宿を確保でき、適当に屋台で飯を買って腹ごしらえをした俺は、やはりルベン議長の娘さんが犯罪者どもに拉致されてないかが気になった。


 力のない俺に何ができるとも思えないけど、聞いてしまった以上無事かどうかの確認はしておきたい。


 よし、ルベン議長の家と盗賊ギルドの様子を見てくるか。


 警備兵が仕事をしてくれて大丈夫そうならそれでいいし、見つかっても通行人のふりをすればいい。完全気配遮断のスキルがあるから、やばそうならスキルを使って逃げればいい。


 部屋から出て、店番のソバージュ女に町の地図はないか? と聞くと「ない」との返事だったが、ルベン議長の家と盗賊ギルドの場所を聞くと「わかるよ」との返事だった。


 酒場から何枚か拝借した注文用紙とペンを差し出すと、一瞬怪訝な表情をしながらも簡単な地図を書いてくれた。


 この女、退廃的で不良な見た目に反して割といいやつなのかもしれない。


 ソバージュ女はこれで用済みだろとばかりに、くわえタバコに足を組み、開いた新聞に目を落として手をシッシッと振った。



 俺はそんな不遜な態度のソバージュ女に一応礼を言い、夕暮れの町に出た。


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