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第49話

 ――第一射、頬のキスマーク……。ヒット。

 ――第二射、おでこのキスマーク……。ヒット。

 ――第三射、お子ちゃまの特級呪物を頭に……。ヒット。

 ――ミッション・オールクリア。


 俺はクソ豚貴族にものの見事にヘッドショットを決めることに成功した……。なんてことはないわけで。


 俺がやったことと言えば、キスマを顔に描いて頭にブツを置いただけだ。


 しかしその効果はある意味ヘッドショットを決めたと言っても過言ではなかった。


 ルベン議長が打ち合わせ通り指摘すると、ローエン・グリモワール伯爵が「なんだそれは?」と質問。


 そしてまた全員の目の前でパンツを両手でもって見せ、会議場全体がざわつく。



「……あの改革派議員と同じロリコンよ!」

「……昨日奥様が泣きながら家を出ていくのを見たわ……、可哀そう!!」

「……恥知らず!! 女の敵!!」



 会議場からは批難ごうごうの嵐。特に女性議員たちが恐ろしい形相になっている。



「まさかとは思ったが、どうやらフローラの報告は事実のようだな。マルグリット、お前には失望したぞ。己が欲望に負けてしまうとは情けない。伯爵家の家督についてはもう一度考えなおさせてもらうぞ!」


「そんな、父上……!! これは何かの誤解なのです!!」


 しかしグリモワール伯爵は聞き耳を持たなかった。


「そういえば、ミスリル装備売買の件で苦情が私の元に届いておりましてな……。なんでも売買で私腹を肥やしつつ、鉱業ギルドの職員を妾にしようとしているという内容でして……」


 それにルベン議長が追い打ちをかける。


「なんだと、それは本当か……? ……マルグリット何か申し開きはあるか」


「父上……、あの……、それはですね……」

 バツの悪そうな表情をしながら何も言えなくなるマルグリット。


「どうやら本当のようだな。してそのミスリル装備の出所は……? ルベンよ。我が町でそのような優秀な鍛冶職人がいたか。いるなら是非会って謝罪と賠償をせねばならぬ。その妾にされかけたお嬢様方にもな。……このバカ息子、恥を知るがよい!!」


 グリモワール伯爵が激昂し、クソ豚貴族はますます小さく縮こまった。


「実は鍛冶師は私の方で面倒を見ておりますのでご心配なさらずとも大丈夫です。むしろ目立ちたくないという若干偏屈な性分の男でして、伯爵様があまり圧をかけるのはよろしくないかと。他の町に行ってしまいかねませんからな。私目にお任せあれ」


「……そうか。ではこの件はルベンに一任する。我がローエンのため、頼んだぞ」


「はっ!」


「……して、お嬢様方にはすぐにでもギルドの方に行って私自ら謝罪せねば沽券に関わる。親御さんにも謝罪だ! ……マルグリット、何をしておる? お前も行くのだぞ!」


「父上、お待ちを~~~」


 俺はその一部始終の会話を後ろで聞いていたわけだが、どうやらピンハネされたミスリル装備の金が戻ってくるらしい。


 とにかくこれで、クソ豚貴族の権威は失墜したと思って良いだろう。


 オリビアさんとリリアさんにこれ以上ちょっかいがかけられることはあるまい。



 ……



 その後、俺はルベン議長の邸宅にお呼ばれし、執務室にて賠償金込みで大金貨4枚(小金貨40枚の価値)を受け取った。ピンハネされた額のおよそ2倍だ。謝罪料も込みなのだろう。


 ミスリル装備を売却した場合、利益の15%をグリモワール様に上納するということで話がついたらしい。クソ豚貴族への上納金が利益の95%だったのだからずいぶんな好待遇だ。というか俺、よく一向一揆が起こりそうな税率を素直に受け入れてたな。


 大金貨4枚を受け取った瞬間、間の抜けたファンファーレの音が鳴った。どうやらクエストクリアのようで、レベルも上がったらしい。今回の報酬としてはお金と経験値だけだった。


 というか、このチャンスを活かさない手はないのではないか? という気持ちがむくむくと湧き上がる。


 処分に困っているCランク鉱石はミスリル鉱石以外にもあって、金鉱石、サファイア、ルビー、属性原石(闇、光)が宿屋の物置にギッシリ詰まっている。もうそろそろ入りきらないほど。


 一度は権力者に頼らないと決めたけど、もうミスリルの件で頼ってしまっている。それなら同じCランクの鉱石もついでに処分をお願いしてしまっても良いのではないかと思う。


 まあ一度に大放出すると、騒ぎになってもいけないので小出しにしつつだけど。


「あの……、ルベン議長。実は……」

 俺は金鉱石を所有していることを伝えた。ミスリルと同じく入手ルートを聞かないでいてくれるのであれば、ルベン議長に格安でお譲りしますと。


 ルベン議長は「ぬあにいいいいいい!!!!! どのくらいあるのだ!?」と目を血走らせて大興奮。俺は現保有量の5分の1ほどだけを報告するに留め、利益の20%をグリモワール様に納めるということで話がついた。


 サファイアやルビーも含めて一気に大放出していたら大変なことになるとこだった。在庫は小出し小出しにしていこう。


 ルベン議長から追加で金鉱石分の大金貨1枚が俺に支払われたのだった。




 ルベン議長宅を出た俺は、改めてステータスウィンドウを開きステ振りを実行する。


Name:Hide(BaseLv15)

Job:blacksmith(JobLv11)

HP:78

MP:87

Status:S(筋力)22+3、V(持久力)11+2、A(素早さ)3、D(器用さ)5+4、I(知能)19、L(運)2+3(Rest0)

Skill:完全気配遮断、言語理解、鑑定、マイニングLv4、鉱石ドロップ、所持重量限界増加(鉱石)、武器製作Lv4、防具製作Lv4、メルトダウン、装備修理、ジュエリーブーストLv1(Rest0)

鍛冶熟練度:FランクLv6、EランクLv5、DランクLv4、CランクLv3

pet monster:マメLv5/5(ポメラニアン・ウルフ)

所持金:620797arc


 今回のクエストクリア報酬と金鉱石売却分で大金貨5枚ももらったおかげで、かなりお金が増えた。


 ベースレベル・ジョブレベル共に1上がったので、前回に引き続きV(持久力)に全振りした。


 ジョブポイントは武器防具製作を当てたいところだがブラックスミスではレベル4のCランクまで。Bランクのレベル5に上げるためにはマスタースミス転職クエストに挑戦する必要がありこれ以上伸ばすことはできない。


 ならスキルポイントが無駄になるのかというとそういうこともなく、ブラックスミスには一応戦闘系スキルもあった。例えば敵をスタンさせる【スタンハンマー】、スキル発動中だけ最大の武器ダメージ効率を叩き出す【マックスウェポン】など。


 だがその中でも俺は【ジュエリーブーストLv1:30分間、サファイアまたはルビーを一個消費して攻撃力1.3倍】を取得した。これならば【マイニング】のダメージも上がるし、他の物理職に転職した場合にも死にスキルにはならない。


 Cランク宝石を消費する金食い虫ではあるが、強力とされるスキルの一つだ。


 今後マスタースミスとBランク鍛冶を目指すかどうかは悩むところだが、Bランク武器を製造できるようになるということは、頭蓋骨がある敵ならば例えBランクでもオークキングと同じ倒し方ができるということ。


 普通のプレイヤーならばミスリル装備でとりあえず妥協して、他の花形職である物理攻撃職や魔法職を検討するところだが、インゴット技があるので目指す価値は十分あると思う。




 さて。とりあえず今やるべきことは、ミスリル装備を(上物)にすればスロットが一つつくのでカードが挿せるようになるので、各装備部位にカードを挿していくこと。


 あとはお金に余裕ができたので、そろそろマメを進化させることを考えよう。


 鍛冶師をBランクに伸ばしていくのであれば、少し俺に考えがあるのだが、今は上二つを優先してやっていこう。俺の考えでは特にミスリルの鎧(上物)を作ることが必須となり、Cランク熟練度を最低でもLv5に上げる必要がある。




 俺は一度ギルドにオリビアさんとリリアさんにクソ豚貴族失脚の件を伝えに行くことにした。


 「ヤツが失脚したのでもう安心です」と伝えてあげたら二人とも手を取り合って喜んでいたよ。


 オリビアさんの業務が終わるまで鍛冶仕事し、一緒に服や小物などウィンドウショッピングを楽しんだ。俺はオリビアさんの髪の色と同じ色のワンピース、オリビアさんは顔が隠せるようなオシャレなパーカーをお互いプレゼントし合った。


 それからマメの進化を検討するためカードショップに行くことに。あまり女の人が興味ある場所じゃないと思うけど、オリビアさんは「マメちゃんの進化!? 私もみたいです!」と言い、付き合ってくれることになった。


 マメが「くーん」と鳴きオリビアさんを見上げたので、オリビアさんはマメを抱っこ。可愛くて仕方ないみたいだ。


 今の所持金額でマメの進化に必要な枚数が揃えば良いんだけど……。

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