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羊谷耀の暇という名の嘘つき〈前編〉
羊谷耀の暇という名の嘘つき〈前編〉
夏代@うさ
現実世界現代ドラマ
2025年07月13日
公開日
3,793字
連載中
【厄除師】の名家の一つである、未谷家の現当主〈未谷 耀〉。 厄除師とは、平安時代から世の中の置き去され思念の塊になってしまった厄払いをしてきた一人である。 現在は、非公認として世間に認知されないように裏の仕事人として存在されている。 社長である〈公主〉が国からの依頼、一般人の依頼などを受けてきた仕事を貰い、報酬を頂いて今日まで生活をしていた。 公主からTELにて仕事の依頼を貰った彼女は、その詳細を聞こうと、公主が表向きで商売している[探偵事務所]に向かっている最中に過去を思い出す ーー

第1話 日本へ帰国してきた彼女は…



 人間は生きている限り、《娯楽》が必要である。例えば……、



「…………うそでしょッ?!?」


 ある晴れた平日の午後。 

 暦ではもうすぐ冬なのに雨が降る前振れなのか異常な高気圧で、薄らと汗が出てしまう暑さである。


 空気の乾燥で喉を痛め易くなった現在。

 そんな中、シゴトの呼び出しで某都会の片隅にある人気の無い静かな路地裏にて、コツコツ……、とヒール音が木霊となり響き渡る。

 一歩ずつ歩く度、空気に溶け込むように冷たく消える無機質な音。 

 共に、翠に近い焦茶色の髪の色。左上に緩い大きめなお団子ヘアに、ゆらりと長めの後れ毛が歩く速度に合わせて緩やかに揺れる。そして、色気のある吊り目に唇の左下の黒子は、妖艶さを感じさせる女性の一部。


 この裏道だけは、日が通らない場所の為涼しさが広がっている。だが場所が場所の為、空気はあまり良ろしくない。 

 なのに、懐かしい気持ちが蘇る。



ーーあの頃に帰りたい、と不思議に思ってしまう程に。


 だが、これからシゴトの打ち合わせだと、無理矢理気持ちを切り替える彼女。

 先日職場先であるイタリアで購入したお気に入りのビジネススーツ。 

 身に纏う姿はスレンダーな身体つきにピッタリと似合う。オマケに背筋がピンッ、とした立ち姿をしているため、より人物のスタイルの良さと綺麗さが映えていた。



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