「ほよぉ」
少女と女性の間のような、
危うい年頃の無垢な目は、
銀色のコインを見ていた。
それは先ほど渡されたもの。
サンザインシルバーというものになれるらしい。
「何だろうね」
危うい年頃の、ネコヌはつぶやく。
先ほど説明は一通り受けて、
サンザインというものになれるということを、
ネコヌはわかっている。
わかっているけれど、
何だろうと思わずにはいられないし、
正確には、何でだろうと思わずにはいられない。
ネコヌは大きく散財をしているわけではない。
ゼニーの力はそれなりに持っている。
でも、散財に覚醒しているわけではない。
ゼニーの力の正しい使い方も、まだわかっていない。
「ネコヌさん」
不意に少年の声がかけられ、
ネコヌはコインから目を離した。
にっこり笑う少年がいる。
「だぁれ?」
「僕はヨーマといいます」
「あたしはネコヌ。よろしく」
ネコヌはふわりと笑う。
「サンザインシルバー、ですね」
「そうなの?よくわからないの」
「わからなくていいんです」
ヨーマは、そっとネコヌに近づく。
ネコヌは小首をかしげる。
何をするつもりなんだろう。
ヨーマは、ゼニーの力を解放する。
ネコヌの目が驚きに見開かれる。
それはゼニーの暗黒面。
ネコヌを飲み込まんとする、暗黒面。
数々の非道の限りを尽くしたゼニーの力による、
恐ろしい側面だ。
ネコヌは、抵抗しなかった。
目を閉じ、ヨーマのゼニーの力に身を任せている。
(さびしいっていってる)
ネコヌは感じる。
(暗いところで、さびしいっていってる)
罠かなと、ネコヌはちょっとだけ思う。
でも、と。
このヨーマという子は、さびしいさびしいといっているのだ。
だから抵抗しない。
ネコヌの銀のコインが、闇色に染まる。
「思ったより抵抗しなかったね」
ヨーマは、ゼニーの力を戻す。
そして、ネコヌに向き直る。
「はじめまして、サンザインダーク」
「…サンザインダーク?」
「そう、シッソケンヤークに使える闇の戦士」
「闇の…?」
「そう、闇の戦士。サンザインダーク。君のことだ」
闇の中、少年がいる。
ネコヌは手を伸ばしたけれど、まだ届かない。