この話は、神龍時家の前当主である〈神龍時 宗一郎〉━━━つまり、俺の父から聞いた伝承である。
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時は遡り、平安時代。
この時代は死霊、生霊などの怨念で溢れ災害が多かったそうだ。
その度に、死者の数は右肩上がりになっていった。
例えば。
突如、口から泡を吹き出し金魚を吐き出して亡くなる武士。
とある夜。牛車に乗っていた貴族が、忽然と神隠しに遭ったり。
また、ある時は。
山の中で無念で亡くなった者が魍魎になり、木こりたちの道中に土砂崩れの餌食にし仲間を増やしたりなど……の被害により都の人口が、減っていく日々が半年続いていったそう……。
そんな、不可思議な恐怖に包まれた都。
それぞれの貴族たちは、名高い陰陽師、霊媒師に退治を依頼するが……無念の死で終わりを迎えてしまう。
そんな状況でも、ますます都の被害は悪化し都外にも気の澱みが包み込むように広がっていったそう。
外れに住んでいた農民たちにも、影響が出て精神的におかしくなる者もいれば、農作物が枯れ、腐る被害も大きくなり。
土地の存在維持が壊滅的だったと記録に残っている。
そして、その中で澱みは二段階ある。
【置き去り】━━
あの世に行きそびれて、この世に生まれそびれた〈
それは、人間だけでは無くこの世に存在する物、モノが思い残した想いのまま、この世に彷徨い留まり続けている。
この時点では、負の感情によって【厄】になる前の初期段階の状態である。
(だいたいが、理性が残っているパターンが多い)
次に、【厄】━━
簡単に言えば〈怨霊の塊〉である。
置き去りが、恨み、怨み、辛みなどの憎しみによる負の感情が一定を超えると、理性が無くなりその時の感情の重さによって変貌する厄介な塊。
負のエネルギーによって変貌した魂は、対象物を呪い殺したり、自然災害を起こしたりなどする。
父曰く、感情を吐き出したくてもできずに、我慢を重ね押し潰された可哀想な被害者らしい。
そして、厄には現時点でレベル1〜10まである。
数字が大きくなるほど、厄処理に悪戦苦闘になり困難にパターンが多い。