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第14話 捕食者なアイツ②

「昨夜は楽しかったなぁ~、か・い・り兄ちゃん♬」



 俺しか聞こえない小声。ほくそ笑み、無邪気に嬉々とする声色の弟。万年筆の件はワザとだ、と確信得た時には時既に遅しだった。

 無理矢理忘れようと、蓋をしていたのに。コイツのせいで黒い記憶の扉が、再度開かれてしまった……。

 声と反して、目尻が下がった無関心そうな瞳の奥は瞳孔が開いていた。獰猛な捕食者を連想させる、この鋭さ。


 あぁ……、━━マタ 喰ワレテ シマウ


 咄嗟に頭の中で浮かんだ言葉。

(このままじゃ、マズイ……早くコイツと距離と取らなくてはッ!)

 何故か、分からないけどそう思ってしまったのだ。

 強いて言うなら、直感、本能、と言うべきか。

 なのに……

 一度受け入れたところは………別の生き物のようにわななき、目の前の雄を欲している。


 欲しくて、欲しくて、堪らない、というくらい。━━━俺の気持ちと反してだ。


 早くこの弟から離れなくては!と、最後の抵抗に思考を切り替える。そして、手の中に収められて万年筆を手放し、重ねている掌を引っ込めた。








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