漆黒の帳が街を覆う。空は黒く、所々に星の瞬きが見える。そんな空を見て自分の方が黒いなと思った。僕はどす黒い。心の中が時折黒くなる。いや、でも、ある意味夜空と同じかもしれない。そうとも思う。僕にとってのゲームは星だ。暗い夜空に輝きを与えてくれる。ゲームをしているときの僕は夜空と同じだ。星の輝きは綺麗だ。
ゲームの主人公が大好きだ。
格好良い台詞。どこまでも突き抜ける正義。どす黒い魔物を彼らはやっつける。ゲームは僕を主人公と重ね合わせ、無限の力を生んでくれる。ゲームをしているとき、僕は紛れもなく主人公なのだ。どんな魔物をもやっつける。
もう中学二年生にもなる僕は、相も変わらず小学生のようにゲームを楽しんでいる。必殺技を格好良く叫び、悪を滅ぼすのだ。魔物を一匹かる毎に繰り広げられるその様は。端から見れば幼稚なそれに見えるのだろう。でも、僕を止める人はこの家にはいない。
「トドメだ、デモンズアタック」
ラスボスを倒し終えた僕は、爽快感を胸にゲームを片付ける。そして、またインターネットにある新作ゲームのページへと飛んだ。
【来る20××年7月31日 聖剣伝説インヘリタンスオブマナ プレスッチ7と同時発売!!】
そう、明日は新作ゲームとゲーム機を受け取りに隣町の1番大きいゲームショップに行く日なのだ。僕、佐藤恭平はこの日を心待ちにしていた。
このシリーズは僕にとって大好きなシリーズなのだ。アクションロールプレイングを扱った作品の金字塔と言って良いだろう。自分の手で敵をなぎ倒していく感覚は僕のためのものなのでは無いかと思えるほど、僕を興奮させるものだった。特に今回の主人公は闇が深そうであり、どこかシンパシーを感じる部分がある。興奮が脳を叩き起こすため、中々眠れないでいる。
学校なんか休んでしまってゲーム三昧したい。気持ちはあるけれど、流石にそれをやると仕送りが止まってしまう可能性がある。面倒事は起こしたくないため、どうにか羊を数えて眠るように自分を仕向ける。
〈羊が一匹・・・・・・羊が二匹・・・・・・〉
僕が眠れたのは羊を五百匹数えた頃だった。