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第2話 念願のゲームを手に入れたのに 

 翌日、いつもよりも早く目が覚める。だが、すぐに二度寝を決め込んだ。今日は徹夜になるからだ。投稿時間ギリギリまで横になり寝だめをする。と言っても興奮して眠れることは無かったが。でも、誰かが言っていた。目を瞑っているだけでも休息効果はあると。

 なんにせよ、そんな朝を過ごして登校する。学校では四六時中ゲームのことを考えていた。考えてはいたが、僕ももう中学二年生。思春期だ。好きな子がいる。時折、様子を見たのは敢えて言わないでもわかることだろう。ただ、彼女がいつもと違ってどこか上の空に見えたのが気になった。とは言え、そんなに気楽に話し掛けられる仲でもないし、自分も基本は上の空なのだから、わざわざ理由を確認する気にはなれなかった。強いて言うなら同じ理由だったりして、とか考えて二人でゲームする姿を考えたくらいだ。

そして、下校時にゲームショップによる僕。ゲームを手にしたとき「やったぁ」と心の中で高らかにガッツポーズをするのだった。そのままうきうき気分で電車に乗ったときだった。彼女の姿が目に入ったのは。何と僕の妄想は少し当たっていたのだ。僕と同じ袋を持って電車に並んでいる。何か凄く嬉しくなる一方で、話し掛けられない自分がもどかしくもあった。たった二駅の距離。共通の話題があるのに好きな子を前にしてしゃべれない僕。彼女はスマフォをいじりながら座っていた。これは山勘だが、きっと聖剣伝説のサイトを見ているに違いない。

キーー

ガタンッ

そんな頃合いに事件は起きた。

「逃げろー、切り裂きジャックが出たぞ」

 電車が突然止まる。何事かと思う。隣の車両が血まみれになっていた。そんな中を一人、鋭利な物をちらつかせて迫ってくる人がいる。

 切り裂きジャック。

 ニュースで聞いたことある名前だ。最近、電車で起こった大量殺戮犯。そう言えばまだ捕まってなかったか。

 逃げる僕。目の端に彼女が転ぶのが見える。すかさず助けようと動く僕。目の前にいる血の塊。畏怖する僕。振り上がる鋭利な物。その先にいる彼女。

僕は、ゲーム機を渾身の力で投げつけた。

怯む切り裂きジャック。彼女の手を取る僕。引っ張り上げる。しかし、簡単には動かない。どうやら腰を抜かしているようだった。再び振り上がるそれ。僕は今度は体当たりをした。

「さあ、行くよ」

彼女を抱え上げる僕。後ろから来る衝動。力が抜けていく。落とすわけにはいかない。踏ん張ってゆっくり下ろす。再び来る衝動。窮鼠猫を噛め。僕は思いっきり後ろを向いて腕をぶん回した。切り裂きジャックにヒットする。

「いやあぁ」

 彼女の声だ。背中から暑い何かが出ていくのがわかる。目の前が暗くなり、僕は倒れた。


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