「そういえば、イブさんの世界には魔法はないんでしたね。それだとちょっと理解しづらいかもしれませんが、この世界にはこの
努めて明るく話すリアムの手の平には、水の球体がふわふわと浮かんでいる。
種も仕掛けもないとはこのことで、
「
まるで
「ただ、
「…………星から借りて、精霊に返す?」
その構造がいまいち掴めず、唯舞が小首を傾げれば同意するようリアムも頷いた。
「ややこしいですよね~……ざっくりいうと、全ての
「…………なる、ほど?」
たっぷりと悩んで返答したが、正直よく分からない。
ただ、何となく現世の
ユーザーが
そう言われてみれば言葉も
「生命力とはいっても基本的には寝て回復するものだから命の心配はないんです。とはいえ、
つまりは
ただ、その回復手段が自身のHPというだけで――
(そっか。ここは……魔法の代償に命を捧げる、そういう世界なんだ)
使えば減り、休めば戻る。
そんな風に魔法を使うたびに命を差し出す世界なのだと気付いて、ファンタジーに浮かれた気分は一気に現実に引き戻された。
弟のゲーム情報がこんな形で活きるとは思わなかったが、それと同時に、抑え込むように唯舞はぎゅっと服を握りしめる。
「そう、いえば……先ほど会った方々はリアムさんよりすごい
「あぁ大佐と中佐ですか? すごいというか、あれはもう化け物の領域ですね。僕も前線兵士の何倍も
そう言ってリアムはひどく遠い目をして乾いた笑いを浮かべる。彼曰く、一般人ならあってもバケツ程度、前線兵士ならドラム缶くらいの
そんな中で前線兵士の何倍の
そんな唯舞の考えを読み取ったようにリアムは尋ねる。
「ちなみに、さっき会った大佐や中佐の
「そう、ですね……うーん、ドラム缶より多いなら……プールとか?」
少し大げさだろうかと思ったが、唯舞の脳裏にパッと浮かんだのは学校によくある25mプールだった。
いくらなんでも飛躍しすぎたかとリアムを見ると、彼はゆるゆると首を横に振る。
「あの人達、正真正銘の化け物ですからね。悔しいことに
「…………へ?」
聞き間違いかとリアムの顔を見れば諦めにも似た笑いに、それが本心だと分かった。
前線で戦う軍人がドラム缶一個分の
「さっきも外で雷とか氷柱が見えたと思うんですけど、あれが通常運転なんです、うちの戦闘職」
「あぁ……さっきの」
リアムが軽く指を振ればパシュンと水の球体は霧散した。
映画のようだと思ったあの光景を作り出していたのは
実力もさながら、あれだけの
(命が代償……か)
その不穏な言葉は、どうしても唯舞の頭から離れることはなかった。