するするとカイリとミーアは、エドヴァルト達の元に移動する。
とっくの前にリアム達も合流していたようで、いい大人六人はアヤセと唯舞を見ながらこそこそと話し始めた。
「ねぇ……エド。
「いや……レヂに行くまでは違ったんだけどさ? 帰ってきたら……なんか、
「あ、やっぱり大佐も気付いてました? 中佐、公国から帰国してから急にイブさんの名前を呼び始めましたよね」
「あぁ? じゃあアヤ坊は今まで名前も呼んでなかった女を急に名前呼びし始めて、あからさまにカイリに威嚇してんのか?」
「「……つまり?」」
カイリとミーアの声が綺麗にハモった。それはつまるところ――――
そう全員が顔を見合わせたところでランドルフがばさりと断言する。
「あのアヤセ中佐にも春が来たって事でしょ? あの二人、付き合ってるんじゃないの?」
「えぇぇぇぇぇ!? ないないない! 絶対無自覚だよアヤちゃん。まず気持ちに気付いてないんじゃないの?」
「確かに。私達のあーちゃんならまず気付かないわよ。だってあの子、彼女はいてもまともな恋愛はしてないでしょ」
「おいおい、アヤ坊の恋愛偏差値クソじゃねーか。このままじゃ嬢ちゃんに申し訳が立たねぇぞ」
「当のイブさんは…………どうなんですかね?」
「嫌い、ではないんじゃない? でも好きかって聞かれると、カイ兄と中佐の差が分からないな」
「前途多難すぎるのよ、
こんなにも面白そうなのに、それ以上に厄介そうな事案に全員が顔を見合わせる。
当の
「いやだ。あーちゃん……めちゃくちゃ執着強い」
「ほら、多分今までで拗らせてるから……さて、どうしようかしら。エド、あんた何とかしてくれない?」
「なんで俺ぇ? イロコイはカイリの担当でしょ?!」
「嫌よ。面倒な男は嫌いなの。それに見てよあれ……あの子、どれだけイブちゃんが好きなの?」
「中佐の気持ち分かっててイブにキスをしたカイ兄はさすがだよね」
「だって、本当にイブちゃんを好きか分からないじゃない!」
「イブちゃんの手前、カイリへの威嚇を抑えたもんねぇ、あーちゃん」
「へっ、好きな女の前じゃカッコつけてぇだけだろ」
「笑えるくらい、いじらしいわ。それで? これって私達のアシストなしでくっつくの?」
「むしろまずはイブさんが中佐をどう思ってるかが重要なんじゃないですか? だって、もしかしたら向こうの世界にイブさんの恋人がいる可能性だってあるんだし」
「何そのクリティカルヒット。アヤちゃん、死ぬでしょ?」
「むしろ異世界まで出向いて絞めるだろ」
「ありえそうで嫌だわ……イブちゃんに捨てられないかしら?」
「とりあえず、あたしとカイリでイブちゃんに探り入れてみる?」
「そうね、まずはちょっと女子会しましょ」
「じょしかい……」
「リアム。カイ兄だから気にしない」
盛大なため息が漏れる。アヤセのいない場で勝手に進んだ彼への解釈だったが、大筋間違っていないのがなんとも言えない。
そこでようやく
「何をこそこそやってるんだ、お前らは」
「…………あー……状況確認と認識のすり合わせ?」
「なんだそれは」
エドヴァルトの答えに尚もアヤセの眉が寄った。
まぁ気にすんなとオーウェンが解散だとばかりに手を叩けば、何とも言えない顔で散ったメンバーがアヤセと唯舞をみて、二度目のため息をつく。
どうしよう、
これはもう隠し通すのは不可能だろうし、これから先、この恋を無自覚に拗らせた不器用な男が唯舞に近付く全生物に威嚇すると考えれば、もう、自然と肩が落ちた。
だが、それと同時に。
アヤセを見て。
唯舞を見て。
エドヴァルトの瞳には、羨望にも似た色が宿った。
かつて自分の名を呼び、笑いかけてくれた黒髪の少女の姿が、一瞬、唯舞と重なる。
今生きていれば、ここにいたかもしれないなんて。そんな歪んだ妬みは、胸の痛みに上手に隠して。
何食わぬ顔で笑ったエドヴァルトは、いつも通りの彼だった。