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第46話 九龍的日常:5月7日

パンダ広場に奇妙な二人組がいた。

片方はペンキの黄色をぶちまけたような帽子をかぶっている。

もう片方は、ウサギの着ぐるみを着ている。

イエローハット&オートバックスバニーだ。


「イベント会場はここになるかな」

イエローハットは言う。

「大体イベントって何するのさ」

バニーが問う。

「イベントは、そうだね」

「うん」

「とてつもなく楽しいことをするのだ!」

「わぁ!それっていったいどんなことをするの?」

バニーはわくわくと次の言葉を待つ。

「バニー」

「なに?」

「これはね、当日までのトップシークレットなのだよ」

「とっぽれーしっく?」

「トップシークレットだよ」

「なにそれ?」

「イベントを作るものだけが、その秘密を知っているのだ」

「ハットさんは知ってる?」

「それもトップシークレットなのだ」

「すごいね、トップシークレットだ」


パンダ広場はいつものように静かに。

イエローハットは何かを見るような見ないような顔をしている。

「ハットさん?」

「なんだい?」

「今ハットさんが感じているのも、トップシークレット?」

「どうだろうね、きっとバニーもわかるはずさ」


バニーは、ふっと爆竹の残り香を感じた気がした。

火薬の匂い。

そして、一瞬だけ、お祭りのそれを感じられたような気がした。

笑顔、お神輿、妄人、いつもはあえない人たち。

それは一瞬。

でも、永遠のような一瞬。

バニーは気がつけば、パンダ広場に呆けたように立っていた。


「あれもまた、イベントなのだよ」

「イベント」

「人はイベントと称して、集まり、笑うのだ」

「いいね」

「そう思うか」

「僕は、そういうの、好き」

「悪くない」


「さて、イベントの噂を仕入れに行くか」

「今度のイベント?」

「そう、イベントは常に最高でなければならんよ」

イエローハットが歩き出す。

「待ってー」

バニーがそれに続いた。

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