男人街。
九龍の町の中でも、比較的老舗の集う街だ。
ミスター・フーは街を歩いていた。
店が撤退しては、新たな店が入る。
サイクル、円環。
古いもの、新しいもの、古くて新しいもの。
この町にいい風が吹く感じがするのは、
きっと円環がうまくいっているからに相違ない。
ミスター・フーは、創造を愛する。
何かを作る力。
それは世界を回す力だと信じている。
破壊も愛している。
全ては円環につなぐための儀式。
創造も破壊も、すべてを愛している。
嘘も真実も。
全てを巻き込んだうねりが街を作っている。
静かに見えて、この町は結構熱い魂が流れている。
龍脈とは、かくも熱きもの。
「フーさん、お元気ですか?」
サングラスをかけた青年、ロックが声をかけてくる。
「私は元気だよ」
「うん、そうですね」
ロックはちょっとだけ微笑み、
「フーさんなら、この町自身と会話ができそうですよね」
「それは?」
「そのままですよ、町の感情とかもわかりそうだなって」
「わからんよ、そんなもの」
「そうですか?」
ロックが問うと、フーは宙を見て答えた。
「わからないがな、風が少し高揚しているのを感じるよ」
「きっと、イベントがあるからですよ」
「イベントか」
フーは少し笑った。
住民のイベントに、町が高揚している。
イベント、祭り。
一つの区切り。
さて、この町に何が起きるのかな。
破壊そして誕生。
虚と実。
私たちがいるところはなんなのか。
この町は実にあるのは、虚であるのか。
本当にこの町は存在するのか。
私たちは本当にいるのか。
全てが嘘とレッテルを張られても。
うねる龍脈は止まらない。
それが破壊を生むとしても。
それが創造を生むとしても。
ミスター・フーは、そういうこともまた好きだ。