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第6話 推しの新規ガチギレボイス

台所の傍にある電話を掴む。

調理器具が窯なのに電話があるのは、どうなってんだってカンジだけど(世界観ガバガバ?)私は迷わずに、とある番号にTELした。


そう、紅龍様のケータイだ。


数コールの後に紅龍様のイケボが聞こえてきた。


『おい、なんでワタシの番号を知ってんだヨ! ワタシのケー番は、オマエ知らないはずだロ!』


呆れたような紅龍様に私は息も荒く告げる。


「ゲームで攻略する時に10秒以内に紅龍様のケータイ番号入力しないとバッドエンドになるイベントがあったから、必死に覚えました!」


それを聞いた紅龍様は、ぷはっと吹き出した。


『マジでカ? オマエ、気合い入ってんナ~!』

「それで紅龍様、お願いがあるんですけど!!」


ゲーム内の紅龍様は礼儀知らずを嫌う過激派だったけど、そうも言ってられない緊急事態なので仕方ない。

紅龍様は機嫌が良さそうだったので、怒ることなく『それデ?』と促してくれた。

なので私は思いっきり叫ぶ。


「紅龍様、養育費を下さい!」


『……は?』


「お願いします! お願いします! 貴方にも責任がある子供なんです!」


『……』


一呼吸の後に中国語の怒声が飛んできた。


你瘋了ニーフォンラ? 為什麼ウェイシュンマ!(何言ってんだお前? 理由を言え!)』


推しのガチギレボイス(新規)、ありがとうございます!

紅龍様は余裕がなくなると母国語で話すんだよね~と思わずニチャアしてしまうけど、理由を話さないと通話を切られかねないので、話を続けた。


「ガルーとサングレとアリアが来たんです! でもこの教会じゃ設備も足りなくて……! ディディが悪事を働く前の時代設定みたいで、お金もないんです! かといって、ガルー達を汚いモブおぢに売り飛ばしてお金を稼ぐとかゼッッタイ出来ないし、子供たちを置いて働きに出るわけにもいかないですし、もう頼れるのは最推しの紅龍様しか……」


しくしく……とウソ泣きしながら伝えると、紅龍様が溜息まじりに告げた。


『……ウソ泣きしてんじゃねーヨ。それで、理由はわかったが、何でワタシが縁も所縁もないクソガキ三匹の為に身銭切らねーといけねーんだヨ? カネなら幾らでもあるが、ワタシ善人じゃないヨ。納得がいく使い道でない限り、ムダ金は出したくねーんだヨ』


その通りすぎるんだけど、私は負けずに言い返す。


「だって、紅龍様が(巻き戻しで)引き起こした事態なんですから、責任とってくださいよ。私、何度も紅龍様(の巻き戻し)で心もカラダも弄ばれたんですから! そもそも子供三人を(殺されない為に)育てろって言ったの紅龍様じゃないですか!」


紅龍様はキレた。


『オイ! 人聞きの悪いこと言うんじゃねーヨ! 重要なことは()内に入れやがっテ! しかもなんで台詞の音量上げてきてんだヨ!』


「心身ボロボロなんです! でもお金さえあれば、子供たちに温かいゴハンとかフカフカのベッドを与えられるんです! ねっ? だから普段、暗黒街で悪い事してる懺悔として、お布施しましょっ☆ おー布ー施! おー布ー施!!(手拍子)」


『養育費じゃなかったのかヨ! 最終的に胡散臭い聖職者になりやがっテ! つうか教会に懺悔しててマフィアが務まるかボケェ!』


「そこをなんとか! そこをなんとか! あっ、そうだ! 紅龍様の愛人になりますから!」


『ついでみたいに言うんじゃねーヨ! そもそもオマエみたいな根性汚い女は御免じゃボゲェエエエエエエ!』


めっちゃ怒られたけど、最終的に私の熱意(ガチャ切りしてもOKしてくれるまで電話突撃します)が通じて、台所やお風呂場、キッズルームをリフォームしてくれることになった! やったあー!


「バンザーイ! バンザーイ!」


私が万歳三唱をしていると……。


ガルーは頭がおかしい人を見るような目でこちらを見ており、サングレは「ごめんなさい、ぼくのせいで、ごめんなさい……」と懺悔モードになっており、アリアは意味もわからないままに私の真似をして無表情のままバンザイをしていた。


とりあえず、ちびっこ三人に『お金もってるお兄さんが衣食住に関しては何とかしてくれるから、しばらくの間は我慢しててね☆』と言い聞かせ、生のジャガイモを前に思案する。


「ポテサラとか? でもマヨネーズ無いしなぁ~……」


そもそも火の準備も出来ない……でも、机の端っこからジーッと見てる、ちびっこ達の期待を裏切るわけには……!

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