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第5話 またナレ死にされちゃう!?

「いらっしゃい! ここは福音教の教会ですよ!」


「……」

「……」

「……」


三人が目を点にして見ている。

∵←こんな感じに。


あ、あれ……?


「……」

「……」

「……」


くっっっっ! しまった!

緊張するあまり、RPGのモブ村人みたいな挨拶しちゃった! 

またアリアにナレ死にされちゃうと案じる私に、アリアが首を振った。


「……わたしたちは、オトナの玩具にされるのだろう?」


ちょ、どこでそんなこと覚えたの!? あ、ハゲから? ごめんね! アイツ、ガルールートとサングレルートでアホほど死ぬから安心して! と謝罪して訂正しようとするも、サングレが泣き出す。


「いやだ、ぼ、ぼく、もう、いたいことも、あついことも、されたくないよう!」


サングレはショタ時代は一人称が『ぼく』なのか……と謎の感動を覚えてしまう。いや、それよりも、サングレは皮膚から刃物を生み出す異能の所為で、両親に捨てられてたのよね……。

それからも様々な人から虐げられて、それはもう酷い目に……。


どう慰めれば……と迷う私の前で、ガルーは地面に座り込み、胡坐をかいた。

既に彼の左目には薄汚れた包帯が巻かれており、隻眼なのは確定らしい。


ガルーは子供とは思えないような笑みを浮かべ、くっくっと押し殺した笑い声を漏らす。


「……ガキをゼンイであずかるヤツなんざ、いねぇだろうよ」

そう告げて、ごろんと横になった。


「まあ、オレはオヤジに片目をつぶされてるからな。見目がわるくて、たかくうれねぇだろ」


ガルーは父親の暴力からお母さんを守る為に片目を潰されたのよね……。それからもお母さんを助ける為に、盗みやスリをしたりして、見つかっては大人に暴力を振るわれ……あ、ダメだ、また思い出し泣きしてきた。

トシをとると、涙もろくなっちゃうのよねと思っている間に、私はダバーッと泣いていたらしい。


ガルーらが、ぎょっとしていたので、私は鼻水を拭きながら力強く言い切る。


「大丈夫よ! あなた達をそんなキツい目に遭わせたりしないから! さあ、まずはオフロに入って、それからゴハンにしましょ!」


こういう時は、あったかいお風呂と美味しいゴハンよね!


三人をシャワールームに連れて行き、汚れた衣服をぽいぽい脱がす。


「やめろ! ヘンタイ!」

「うわーん! ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!」

「……」


アリア以外は嫌がっていたので途中から本人らに任せていたけれど、衣服はどれも泥や血、垢まみれで異臭がしていた。

漂白剤入りの洗剤で……いや、これつけ置きで……と考えている間に料理はどうしようかと人手の足りなさに悩んでしまう。

とりあえず着替えはテキトーに置いておくとして……。


というか、一人暮らししていた私、自炊するよりコンビニ弁当派だったので、料理が出来ないことに気づいた。

カンタンな目玉焼きとかなら何とか出来るけど、このゲームの調理道具、中世ヨーロッパで見るような窯とかばっかりだから火加減どころか火の起こし方もわからないのよね!?


どうしようかと思っていると、シャワーを終え、着替えを身に着けたガルー、サングレ、アリアが台所にちょこちょこ来ていた。

(子供用の衣装がなくて、アリアだけ背丈の関係で女の子の服を着ていた)


ガルーがアリアを奇異な目で見ていたので、一応注意しておこう。


「こらっ! お友達をそんな目で見ちゃダメだぞ~? ていうか、教会にある服が少ない所為だから、文句も言わずに着てくれてありがとうね! 綺麗に着こなしてくれて嬉しいわあ! 良い子ね!」


ガルーからは「こんなネクラなヤツ、トモダチじゃねぇ」とか罵詈雑言が飛んできたけど、アリアは無言で頷いていた。

さて、お風呂が済んだなら、次はご飯の番よね! と私はフライパンで素振りをする。


「待っててね! 今から美味しいご飯を作ってあげるから!(マトモに作ったことないけど!)」


まぁ、料理なんて地球上の大半の人が出来るんだし、大丈夫でしょ! と舐めプしている私に子供たちは目を輝かせる。


「おい、もしかしてメシくれるのか。カネねぇぞ」

「あの、ぼくも、おかね、もってなくて……」

「……なまのジャガイモしかないな」


不安げな子供たちに私は聖母の笑みを浮かべる。


「お金なんていらないわ! だって、あなたたちの笑顔が報酬ですもの~オホホホホ!」


……ちょっとこれは胡散臭かったらしく、三人はアリアを盾にするようにしながら、後退していっている。

しまった……!


まぁ、それはさておき私が子供の頃、大人は皆、自炊が出来るものだと思っていた。

きっと彼らもそう思っていることだろう。

というか、よく考えたらジャガイモだけで何を作れと!?

急に不安になってきた!


そこで私は最終手段を思いついた。

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