目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

第10話 シスターは、ワルいおとこがスキなんですか?

どうしたのかな~? サングレ~? と促すと……。


「……シスター、この お じ さ ん、だれですか?」


おじっ……!? 

私が止める前に紅龍様がキレてサングレの顔面を掴む!

あぁあああああああ! 紅龍様のこめかみに青筋がぁあああ!!

そして子供相手にマジギレしている紅龍様はイラつきを隠せない声でサングレに告げた。


「……ワタシ、威勢が良いヤツは好きだが、無礼なヤツは大キライなんだヨ」

「……」


睨み合う二人。

25歳と6歳がケンカとか無理がありすぎるっていうか、紅龍様は25歳! オッサンっていう年齢じゃないから!!

年齢発言は自分にも刺さるので、私は二人を止めるべく、騒ぎまくっていた。


「止めて紅龍様!」

「オマエは黙ってロ! クソガキの躾はワタシがしてやるヨ!」

「止めて紅龍様!!」

「だから黙ってろって言ってんだロ!」

「止めて紅龍様!」

「オイ! コレ、ワタシが止めるまで無限ループするモブとの会話か!? オマエ、モブ扱いでええんカ!」


いいです! サングレが、すぷらった展開にされて、紅龍様がショタを処すクズキャラ化するくらいなら、私はモブキャラで!


そんな私の熱意が通じたようで、紅龍様はサングレを解放してくれた。


サングレはフーフーと荒い呼吸を漏らしていたけど、幸いケガはない。

よ、良かった~! ゲーム内で紅龍様、鉄球を素手で砕いたりしてた暴力の擬人化状態だから、サングレが夏場のスイカみたいにされちゃうかと……。


紅龍様もサングレの刃物錬成能力の異能で手の平を刺されていたのに、かすり傷だった。

紅龍様の皮膚、硬っ! 


さすがラスボスの貫禄……とゴクリとしていると、サングレが私の服を引っ張った。


「シスター……」

「ん? どうしたのサングレ? 怖かったわね~よしよし。お に い さ んとケンカしちゃダメよ? お に い さ ん、さいつよ枠で相手が悪いからね?」

そう告げると、サングレはボソリと呟いた。


「……シスターは、ワルいおとこがスキなんですか?」


ハッ……!


ピンときた。


これ、子供あるあるな『周囲のおねいさんに初恋しちゃうやつ』じゃない……? と。

やだ~! 私ったら、捨てたモンじゃない~! サングレの初恋泥棒しちゃったのね~!


と照れたけど、よく考えたら照れてる場合じゃないやつや! ここで


・悪い男が好き ◀

・悪い男はゴミ


この選択肢をしくじってしまうと、サングレがマフィアに就職して賭博王になっちゃう的なゲーム通りのアレなんじゃないの!? 


それで最終的に聖女ユリを罵りながら4Pするような変態紳士に育ったりしたら辛い!

ここは


・悪い男が好き 

・悪い男はゴミ ◀


こうでしょ!


「あ、あははははははは。まさかぁ~! 私、キケンな香りがする男とか無理なの!」

「そーなんですか?」

小首を傾げるサングレに私は何度も頷く。


「そうそう! やっぱり堅実に会社勤めしてて、給料日にささやかな花束とケーキでも持って帰ってきてくれるような、浮気とかしない一途なヒトが好みだから、マフィアとかヤのつく自由業とか三次元じゃ無理……って、ひぃっ! 紅龍様! 視線で殺さんばかりの眼差しに!!」

「オマエ……ワタシ一筋とか抜かしておいて……」


紅龍様が拳をバキバキ鳴らしていた。

し、しまった……! ワルい男と書いて『紅龍様』とルビをふるくらいに、この人、悪党だった!

真逆の人がタイプとかウソでも言っちゃいけなかった!

そう、紅龍様は浮気に厳しいのだ! 自分は愛人を囲いまくってる癖に!!


とか考えてる間に紅龍様が殺気と共に近づいてくる!


「だ、だめです紅龍様! 今はコンプラ厳しいんですから、乙女に暴力は!」

「コンプラぁぁあああァ? オマエ、ワタシと対極の存在を好みにあげておいて、どの口がほざいてル!」

「あぁあああああああああああああああああああ」


紅龍様にアイアンクローされていると、サングレが声を張り上げた。


「ぼっ、ぼくはっ、おまえなんかにまけないからなー! ばーか!」


そして走り去るサングレ。

その場に残されたのは、頭を粉砕されかける危機に瀕した私と、猛獣と書いて『紅龍様』とルビを振る存在だけだった……。

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?