目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

第11話 俺の推しの過去が悲惨すぎる件について


何とか推しにアイアンクローで殺されて巻き戻る危機は逃れたけど、ヤキモチ妬きの紅龍様は、しばらくプリプリねちねち怒っていた。

『ワタシというものがありながら、良い身分だナ!』とか『流石に六歳児を落としにかかってるのは引くワ!』とか、ひとしきり愚痴ってから、帰って行った。


様子見とか言っておいて、何しにきたんだろ、あの人……。


と思って台所のテーブルを見ると、いつの間にか小綺麗にラッピングされた箱が置いてあった。

こんなの見覚えなかったし、何だろうと近づいてみると、紅龍様の文字でメッセージカードがついていた。(ファンブックで見た、推しの筆跡を覚えているガチ勢)


『やる』


とだけ書かれている。

やる……? くれるってことなのか、おまえを犯るっていう意味なのかイマイチわかりづらいけど、箱を開けてみる。


ウサギとタヌキとネコとイヌのケーキが入っていた。わ、かわいい!


「わぁ~! やだ! 紅龍様! 手土産があったのに出せなかったなんて、奥ゆかしいところあるじゃないですか~!」


タヌキケーキを手に取ろうとすると、タヌキの首がぽろりと落ちた。

そして断面には赤いシロップで


『敢劈腿 我弄死你(浮気したら殺す)』


と書かれており……。


パタン……。


私は見なかったことにして箱を閉じた。

とりあえず、推しの愛が重くてお腹いっぱいになったので、ケーキはガルー達にあげることにした。(ケーキ四つってことは皆で食べろって意味だろうし)


そんなこんなで子供たちを呼び寄せてケーキを食べたところ……。


アリアが、すっごい目を輝かせていた。


「……! ……!」


いつもの無表情の中、瞳だけがキラッキラだ!

この子、食べ物に関しては興味津々だったな~と、ジャガイモに夢中だった姿を思い出す。


アリアの裏設定は、マフィアクター本編でも明かされなかったのだ。

それでシナリオライターがガルーとサングレ贔屓だったからと言われ、アリア推しの中でプチ炎上状態になった。


で、満を持して発売されたファンブックで


『アリアの母親は夫を盲目的に愛する女だった。しかし夫に捨てられたことで発狂。息子のアリアに父親の服を着せ、父親の代わりをさせた。母が自害してからもアリアはそれらがトラウマとなり、心が壊れ、女性名を名乗って女性の衣服を着ることで母からの仕打ちから無意識に自身を守っている。食事もほとんど与えられなかった為、美味しいものに目がない』


と公開され、全アリアクラスタが「知りとうなかった」「俺の推しの過去が悲惨すぎる件について」と阿鼻叫喚の渦に叩き落されたのだ……。


それで本編でアリア(大人)が無表情で『任務完了』『戒律を守れ』とかしか言わないのは、ゲーム本編でも心が壊れたままだからだと言われている。


よく考えたら、そんな相手を前に、どうしろと……?

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?