「ありがとアリア! あなたが居なかったら、私は酒瓶で頭をカチ割られて巻き戻ってるところだったわ!」
子供たちが同時に「まきもどっ……?」と繰り返したので、誤魔化しつつ続ける。
「結果が大事ってよくいうけれど、どういう行動をしたかが成長に繋がると私は思ってるから、アリアは大丈夫! 立派な大人になるわよ!」
だからお願いだから私を殺さないでね! と願いを込めて祈りのポーズをする。
それを見ていたアリアは目をぱちくりさせた後、頷いた。
「……わかった。りっぱなおとなになる。そして、そのときこそシスター・ディディのチカラになれるように、がんばる」
おっ……? こ、これは良い流れでは!? ナレ死回避きた?
私がキャッキャしていると、ガルーがアリアに告げた。
「おい、おまえ、さっきピストルで遊んでたときに、六発撃ってたぞ」と。
えっ……? じゃあ、もしさっきアリア父に向けて発砲してたら、アリアは自分に弾が当たってたってこと……?
しかしアリアは承知していたのか、頷いている。
「そうだな。一発うって、リセットしておくか」
アリアが銃口を自分のこめかみにつけていた。
いや、オモチャの銃でも痛いでしょと思ったけど、一番当たってほしくない場所に当たる能力なので、こうした方があらかじめ回避しやすいみたい。
異能持ちって大変ね……なんて考えていた私は、銃声と共に何かが鼻先に当たった。
「あいだァッ!」
地味に痛くて鼻頭を押さえると、目の前の床にコルクの弾丸が転がる。
ま、まさかナレ死の危機、回避してない!?
焦る私に、アリアが見たこともないくらい驚いた顔で銃と弾丸と私を見比べていた。
サングレがキーキー怒りだす中、アリアは何かに納得したのか、何度も頷いている。
いや、こっちはまるでわからんのだが!?
それからアリアは銃を仕舞うと「すまん」と言った後、淡々と語りだした。
「りょうりも、そうじも、ぼうりょくも、もっと上手くなって、シスターにムコ入りする」
ん?
今、なんて言った?
暴力? 婿入り??
問い返す前にサングレが詰め寄っていた。
「ちょっと! アリアくん! いま、ききずてならないコトいってたよね!」
「どれだ」
「シスターに、ムコ入りって!」
そこでサングレがピーピー騒ぎ、アリアはサングレを無視し、ガルーは「ガキを誑かすなんて、性悪女じゃねぇか……」と呆れていたけど……。
「シスターのおムコさんは、アリアくんなんかじゃダメだよ!」
「泣き虫サングレよりマシだ」
「だめ! シスターのおムコさんには、ぼくがなるの!」
「弱虫サングレじゃ、シスターはまもれない」
「まもれるよ! だってぼく、シスターだいすきだもん!」
サングレとアリアがケンカし始め、ガルーから冷たい眼差しを向けられる。
そんな目で見るんじゃない!
流石に六歳児や七歳児を将来的であれ婿にするわけにはいかないっていうか、私の推しは紅龍様なんだってばーー!!
と叫んだところで私は緊張から解放されたことで、力尽きて倒れるのだった。