「ガルー!」
駆け寄って抱き起す。
炎はガルーの皮膚表面から生み出されているのか、彼に危害を加えていないのは幸いだったけど、慌てて触ると手がヤケドしかけた。
「あっづうぅ!」
私の悲鳴にサングレが慌てて水を持ってきてくれた。
アリアはガルーにバケツの水を何杯も浴びせかけている。
それでようやく、ガルーが意識を取り戻した。
「う……」
片目を開けたガルーは、私を見ると直ぐに起き上がり、距離をとろうとする。
「ガルー!」
呼びかけるも、ガルーは何も言わずに、ヨロヨロと歩き出そうとした。
そんな姿にサングレがイラッとした様子で噛みつく。
「ちょっと! ガルーくん! シスターがしんぱいしてくれてるんだから、ちゃんと返事しなよ! 家具だって、いっぱい燃やして迷惑かけてるんだから! ぼくだって、はものを出して、おようふくやシーツをやぶっちゃったときは、シスターに、ごめんなさいするのに!」
そんなサングレの肩に触れて止める。
「いいのよ、サングレ。家具とかはまた買えばいいんだし(紅龍様の金で)あなた達が無事で居てくれたら何よりだわ。お金より命よ(紅龍様の金だし)」
「シスター……」
しょんぼりするサングレに「気にしてくれてありがとうね」と伝えると、彼は直ぐに照れ笑いを浮かべる。
それを見ていたガルーは舌打ちした。
「……どいつもこいつも、その女に誑かされやがって。なさけねぇ」
ガルーの言葉に今度はアリアが進み出た。
「おい、ガルー。かのじょに、しつれいなハツゲンをするな」
「あ?」
威嚇するようなガルーにアリアは淡々と告げる。
「シスターは、しょうらいのわたしの妻だから、こまらせるな。夫として、みすごせない」
「……あ……?」
ガルーが困惑している!
将来の嫁発言にサングレが騒ぎそうなので私は手をパンパン叩いて、お仕舞いにしようとした。
「はいはい! そこまで! ガルー、早くパンツ穿いて! あなた、すっぽんぽんのままでしょ!」
私が焼けずに残ったクローゼットから着替えを取り出すも、ガルーは鼻で笑って仁王立ちする。
何それ新手のセクハラ? とか思ってると……。
「なんだ? おとこのはだかをみるのは、初めてか?」
……あ?(イラッ
は、初めてじゃないし! 乙女ゲーで散々見たし~!?!? と怒鳴りたいのを堪える。
こ、この野郎~~ッ! どこでこんなセリフ覚えてくるんじゃあ!!
しかし私はガルーにズボンやらシャツやらをぽいぽい放り投げながらガミガミ叱った。
「バカなこと言ってないで、さっさと服を着なさい! 風邪ひいたらどーすんの! 大体、アンタたちの全裸なんかスチルで何十枚と見てきたんだから新鮮味も何もないのよ! そもそも私を鼻血ふかせて昏倒させたいなら、紅龍様の全裸スチルを持ってきなさい! フルコンプしてないのよ紅龍様と
※珠天先生は20年後のゲーム本編でしか出てこない攻略キャラである。(この人も落とすの難しいのよね~)
私の意味不明な発言に全員が「は……?」「スチ……何?」「しゅてん?」と戸惑っていた。
まぁ、20年後のゲームの世界で、ガルー(28)、アリア(27)、サングレ(26)のR18スチルをコンプリートした私に死角はないっていうか、まず第一に、幼児の全裸に興味あってたまっか!!
ついでだから全員で、もうお風呂に入っちゃいなさいと追い立てる。
その時に、ガルーにお母さんの手紙をこっそり渡しておいた。(サングレとアリアには、お母さんがいないので表立って渡してるのを見ると辛いかなって思ってのコッソリ)
「ほら、ガルー。お母さんから手紙よ」
「……!」
ガルーが奪うようにして受け取ってから、手紙を大切そうに壁のレンガの間に挟んでいた。
レンガや石なら、もしもガルーのパイロキネシスが暴走しても、燃え辛いからだろう……。
そう思うと、小生意気なガルーがどれだけのものを背負ってるか想像できて、何だか切なかった。