「
いつも落ち着いていて少々のことでは動じないウリが、顔を引き攣らせて慄く。
私がサキから習ったそのスキルは、相手の防具を完全に破壊するだけでなく、防御力をゼロにする効果もあった。
金剛石よりも硬いと評されるウリやヴォロスのような防御キャラには、天敵のようなスキルといえる。
「ヒロ、間違ってもそれを味方には使うなよ?」
「使いませんってば。サキさんじゃないんですから」
私に念押しするウリ。
実は、彼はサキから
◇◆◇◆◇
天界の鍛錬場。
私にスキルを伝授するサキは、運悪く近くで天使たちに稽古をつけていたウリを実験台にしたの。
「見てなさいヒロ、これがこのスキルの真の効果よ」
流し目気味に微笑みながら、サキがウリめがけて放ったのは水の矢。
1本に見えるけれど、実際は幾千もの矢の集合体だよ。
怪訝な顔で振り返るウリにそれが当たった直後、重厚な鎧も、大きな盾も、粉々に砕け散った。
「なっ?!」
ギョッとするウリは更に驚くことになる。
彼が鎧の下に着ていた衣服さえも、細かく破れた末に糸くずと化して散ってしまった。
当然、ウリは丸裸ね。
生まれたまんまのイヤンな姿にされちゃったの。
「「「隊長っ?!」」」
稽古途中の下位天使たちも、ギョッとして目を真ん丸に見開いている。
その破壊力には、水の力の他に、素早く魔法を撃ち出す技術も影響する。
覚えたての私は防具を破壊する程度だけど、極めたサキは相手を包む物全てを破壊できた。
「ななな…っ?! なにをする?!」
慌てて股間を隠しながら、ウリが困惑した声を上げる。
私は後にも先にも、あんなに動揺したウリを見たことはない。
下位天使たちが、サーッと青ざめている。
サキだけが、悪戯が成功した子供のように満面の笑みを浮かべていた。
「見た? 凄いでしょ?」
「は、はい……」
サキは得意気にニコニコしながら言う。
私はとんでもないスキル効果に顔を引き攣らせて答えた。
「みみみっ、見たのかっ?!」
「「「みっ見てませんっ!」」」
一方、ウリは慌てまくり、顔を真っ赤にして訊いてくる。
稽古をつけてもらっていた下位天使たちが、顔面蒼白で引き攣りながら一斉にウリに背中を向けた。
ウリは私の方を向いて訊いているのだけど、もはや彼等にとってそんなことは関係ない。
「ふふふっ、ヴォロスもあれくらい丸裸にしてあげなさい」
「物理的にも社会的にも破壊するんですね……」
なんだか楽しそうなサキに言われ、私は苦笑するしかなかった。