僕、
大学二年生の
そんな僕らはコンクリートジャングルの上で、太陽光と地面に照り返った反射光を受けながら、散歩をしていた。
僕が、隣を見ると、百八十センチ近くあるぼくよりも神森は身長がちょっと小さく、百七十あるかないかくらいだろうか。
彼の持ち味の
神森のほうでは、特に女子から向けられた
僕たちは、東京を歩き回って、何かちょっとした立ち飲み屋を発見したらそこで、くだを巻くということをやり始めた。
はやく、立ち飲み屋が見つかればいいけど。
大学が御茶ノ
歩こうと思えば、僕たちはどこまでだって歩くことが出来た。
まだ、散歩もとい
神森が
「俺たちは、
「だー、にっぽ、さんぽ、くらう?」
「大日本東京散歩倶楽部だよ、ノッス」
僕は苗字の鴻巣をもじって、「ノッス」と呼ばれていた。僕も仕返しに、神森のことをもじって、「ミモリ」と呼んでいた。
「だいにっぽんとうきょうさんぽくらぶ?」
オウム返ししか出来ないのが情けない。でも、この残暑の中では
「そう。
「うーん。その、なんとか野球部がジャイアンツになったってことは、僕たちもいつか
「どうたろうな。あるいは、
「ウォーカーズ、とか、どう?歩く人たちだから、ウォーカーズ」
「ノッス。君の意見は採用だ。大日本東京散歩倶楽部、通称ウォーカーズ、これで決まりだよ」
「でも、どこかに届け出をするとかじゃないんだから」
「ノッス。
少し、歩く。Googleマップを開くまでもないが、
ようやく、僕たちは立ち飲み屋を見つけ、入った。せっかく散歩をしているから、腰を
安いビールで乾杯をする。僕たちは喫煙者ではないので、ニコチンに支配されることはない。
「ミモリくん」
「なに?」
「なんか、色々詳しいよね」
「はあ?」
「いや、村上春樹のこととかさ、ジャイアンツのこととか」
神森は顎に手を当て、首を傾げた。
「どうだろうな。知識は
「たとえば、他に興味のあることは?」
「そりゃ、もちろん、君だよ。ノッス」
「ぼく?」
「そう。大学一年の時に休学した真相も謎だし、どうやら友達も彼女もいないみたいだ。講義にはちゃんと出てて、特に単位が危なそうとかそういう話も聞かない。アルバイトやサークル活動をするでもなく、こうして俺とぶらぶらしている。最高の興味の対象だ。いや、興味を持ったから、俺は君とぶらぶらしているのか?うん。まあ、そんなところだ」
「なんか、よく喋るよね。ミモリくんって。将来、政治家にでもなるの?」
「なれるかどうかは、別だけど、そもそもなるつもりはない」
「いいじゃん。政治家。選挙の時だけ頑張れば、あとは楽そうだよ」
「まあ、そうでもない。議員というのは
二人の間に沈黙がおりた。
神森がまた口を開いた。
「聞けよ」
「うん?」
「なんで、政治家になるつもりがないのか、聞けよ。俺のことに興味ないのか?」
「あ、あぁ・・・ごめん。なんで、政治家にならないの?」
「そりゃあ、小説家とかのほうがまだマシだからだ。なぜかというと、小説なんか、読んだ人の心を軽くするあるいは重くする程度の影響しかなく、世の中のためになっているとは言いがたい。しかしだねえ、ノッスくん。政治が
僕は神森の言葉を真剣に聞いた。講義で教授やら、講師やらが発する言葉はすべて忘れていいような気がした。
神森の言葉だけ覚えていればいい。
神森だけが真実を語っているように、僕には思えた。
【つづく】