もう僕の心は、どす黒い疑心に包まれ侵されていた…。
4月初旬から9月の今日まで、ずっと続けてきた、気になった女の子らへの《声掛け》…ナンパと言われればそうかもしれない。けれど自分では、もっと純粋なものだと思っていた。
なんか…もう今日は声掛けとかする気が無くなった…完全に失せた。
あぁそうだよ。どうせ僕は背が低いよ!どうせ黒ぶち眼鏡小僧だよ!どうせ服装も髪型も田舎者そのまんまでダサいよ!!
可愛い彼女とか夢のまた夢…どうせ僕は一生モテないんだろうよ!!
せっかく今来たばかりだけど、駅構内から出ることなくこのまま、また電車に乗って帰ってやろうか、とも考えた。
…あ、そうだ…あのラーメン屋…。
声掛けの日は、いつも必ず同じラーメン屋で腹を満たして、それから声掛けをしてた。今日だってそうだ。昼飯…何も食べてない。
そうだよな。せっかく来たんだし、あのラーメン屋に寄ってラーメンを食べてから帰ってもバチは当たらないはずだ。うん…とりあえず、あのラーメン屋に行こうか…。
全身に、僕を囲うお洒落な女の子らのキツい視線を目一杯浴びながら、僕は新井早瀬駅を出てラーメン屋へと向かった…畜生。
この約5ヶ月で初めて見る《満席状態!》
そりゃそうかな…。店は古いけど、ここのラーメンは本当に美味いもんな…。
…仕方ない。僕はくるっと振り返り、店を出ようとした。すると…。
『ちょっと!そこのお兄ちゃん!ほら!ここ!席空いてるわよ!』
『……えっ?』
呼ばれて振り向くと…カウンター席に座り、60代前半くらいの店の旦那さんと、何やら話をしながら時々ラーメンをすする、50代半ばくらいの着物姿の女性…んっ!?
違う!!今、僕を呼び止め、手招きしてたのは、着物姿の…オカマのおっさんだ!!
僕はそろり…そろりと恐る恐る、そのオカマのおっさんの隣に進み…座る。
『はいよ!豚骨ラーメン一丁!』
注文した豚骨ラーメンが来た。割り箸を割って、早速食べ始める…。
『…ねぇ清ちゃん、最近来てくれないから淋しい思いしてるのよぉ。うちのお店に呑みに来てよぉ』
『あぁ、行きたいんだけどなぁ…けど、うちのカミさんがさぁ…』
…お店?
聞こえてくる話の内容からすると…どうやらこのオカマのおっさん、おかまバーの店長ぽい。つか…今僕ラーメン食べてるのに、キツい化粧の匂いが横からプンプンする…うぇ。
ラーメンを食べていれば、当然眼鏡が曇り始める…僕は眼鏡を外して、それをカウンターの上に置いた。