…はっ!?
僕はびっくりして体がビクッとした!どうやら…僕も到着するまで寝てた…らしい。
目が覚めると、後部座席のドアが空いてて、そこから覗き込む秋良さんと春華さん、詩織の顔が目に入った。
『あーぁ…もう着いたの?詩織』
『うん。岸鉾神社の駐車場だよ』
…じゃあ、車から降りないと。と思って体を捻り、足を車内から外へ出そ…あれ?足が…えっ!?地面に届かない…。
原因は解ってる…着慣れてない振袖のせい…なんだけど。えぇ…どうしよう…。
『秋良さん、金魚は?』
『あぁ。車ん中で寝てた。で、今起きた』
駐車場の少し離れたところから聞こえて来たのは、啓介さんの声。
『なんだよ。手ぇ出せ…ほら』
秋良さんが手を差し伸べてくれた…んだけど、僕の右手を無理に引っ張るたびに、バランスを崩して頭から地面へ落っこちそうになる。
『秋良さん、そんなんじゃ駄目だって』
秋良さんと啓介さんが交代。
啓介さんは自身の右腕を僕の左脇の下に差し込み、自分の胸へと抱き寄せるように、右手を僕の背中に触れさせた。
僕も啓介さんの首元へ、両腕を絡めるように回す。そして啓介さんの左手は、2人分の体を支えるために車体に接触。
『いいか金魚。体を引っ張り出すから、頭が車にぶつからないように気をつけな』
『…は、はい!』
『よし。行くぞ。せぇの…くっ……っと!はー…はぁ…』
ぐいっと僕を抱き上げ、車の外へと出してくれた啓介さん。おかげ様でようやく駐車場に着地。
少し息荒く呼吸してる啓介さん…僕の背中へ回された啓介さんの右手は未だそのまま…だから僕も自由に動けず、僕の両腕は啓介さんの首元に絡んだまま…。
やっぱり啓介さんってカッコいいや。心遣い完璧で凄く優しいし、いざって時に凄く頼りになるし。イケメンだし…。
…なんて考えてたら…!!
詩織が、意味深なニヤニヤ顔で僕らのそれを見てたことに、ようやく気付いた…。
それで僕は啓介さんの右腕を優しく退けて、ゆっくりと少しだけ離れた…。
『そして…これがキッカケで、女装小僧と縫製青年とのボーイズラブストーリーが今始ま…』
『始まらないし…』
『あら…そう?残念ね。きゃははは』
『……。』
…駐車場から歩き始め…今、やっと最初の大きな石造りの鳥居を通過。振袖姿と草履での歩き方、そろそろ慣れてきたけど…。
普段なら気にもしない程度の、石畳のほんの僅かな段差でも、気を付けていないと危うく#躓__つまず__#きそうだ…。
しばらく歩いて…ここから長い道のりの勾配の緩い登り坂に。
詩織は僕とペースを合わせて、ゆっくりと歩いてくれている。
アンナさんと春華さんは、僕らの少し前を…秋良さんと啓介さんなんか、更にずーっと先を歩いている。頑張って追い付かないと。
『ほら…見て!山田さん!』
『あんらぁ!んまぁ、なんて可愛らしい振袖姿の女の子たち!』
『こんにちはー♪』
『…こ、こんにちは』
初詣を済ませ、引き返すおばさん2人とすれ違う。
『うわーぁ!ちょっ…見てよ!あれー!振袖!』
『わあ!ほんとだ!綺麗な振袖姿のお姉さんだあ!』
『凄ーい!振袖きれーい!』
『いいなー!可愛いー!』
『あなた達だって可愛いわよ♡』
『きゃああ♪』
…高校生だろう4人の普段着の女の子たちとのすれ違いざまに、そんな一言で彼女たちを喜ばせて楽しんでる詩織。
女子高生たちは心浮き立って騒がしく大笑いしながら、そのまま振り向かず坂を下りていった…。
けど、僕は歩くことに必死で、それどころじゃない。
『金魚、ほら…みんなあそこで待ってるよ。もう少しだから頑張ろう!』
『うん』