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第十一話 侮辱ゲーム

「同じ数字を引いた者同士で席を替わるよ。隣同士はダメ〜」


黒崎龍之介が机の上に紙くずを置くと、同じ数字を引いた二人が自然にペアとなった。

最初のプレイヤーは四人。他の者は順番待ちで、1と2を引いた者からゲーム開始となる。

小松美穂は不運にも、数字の2を引いてしまった。


顔を上げて向かい側を見ると、三井雅人が1を引いており、まさに彼女の対戦相手だ。

同じく1を引いた黒崎龍之介が小松美穂に向かって挑発的に眉を上げた。


「さあ、これからどうやってお前を潰そうか」


「もう一人の2は?誰が引いたの?」

三井北斗が一瞬躊躇し、手のひらの紙くずを開いた。


「僕、トランプあんまり得意じゃないんだ。後は頼むよ」と小松美穂に笑いかける。

彼女は泣き笑いのような無理やりな笑みで応えた。

彼女はおとなしい性格で、こうしたトランプゲームはほとんどやったことがなかった。

さっき龍之介がルールを早口で説明したせいで覚えきれておらず、それなのに北斗のような遊び慣れた人間までが「できない」とは?これは明らかな嫌がらせだ。くじ引きで龍之介がイカサマをしたのでは?と疑わざるを得なかった。

龍之介から配られた手札を受け取ると、まったく繋がりのないカードの並びに彼女は呆気に取られた。


龍之介が指先でカードをくるりと回し、最後の一枚を差し出した。


「小松さん、始めるよ」


この妖しい声に、美穂は針のむしろに座らされたような気分になった。


彼女はドレス一枚しか着ておらず、一敗ごとに脱がなければならない。つまり丸裸にされて晒し者にされるのだ。風俗嬢と変わらない。龍之介がさっき彼女に浴びせた「接客経験がない」という暴言の腹いせに、わざとゲームを利用して彼女を苛んでいるのは明らかだった。


美穂はその意図を理解していたが、手元のカードがあまりにも酷く、さらに北斗の投げやりなプレイが重なり、焦りのあまり手のひらに冷や汗がにじんだ。それなのに雅人が妙に張り切り、微塵も譲ろうとしない。彼女が3を出せば、すぐに爆弾で封じ込めてくる。


顔面蒼白になった美穂を見て、隣の龍之介は慌てて彼女を膝の上に抱き上げた。「焦るな、教えてやる」

カードに集中している美穂は、自分が龍之介の膝の上に座っていることに全く気づかず、ただもうてんてこ舞いで振り返って訊ねた。


「この手、どうすればいいの?」


龍之介は彼女の手札を受け取ると、素早く同じスートの階段を組み、場に叩きつけた。

それを見た龍之介が不満げに白目をむいた。


「黒崎様、それズルじゃないですか」


龍之介は眉を上げて言い返した。


「それで俺の手に勝てるかどうかだけ言えよ」


黒崎龍之介は鼻で笑い、カードをまとめてソファに背を預けた。

黒崎のその様子を見て、美穂のずっとひそめられていた眉がようやく少しほぐれた。

思わず嬉しそうに龍之介を振り返って笑った。

その笑顔を見た龍之介の心がむずっとかゆくなり、ついまた彼女に口づけした。


ひんやりした感触が襲い、たちまち美穂の意識が戻る。自分が龍之介の膝の上に座っていることに初めて気づいた。


もがいて逃げ出そうとしたが、龍之介は抱きしめて離さない。「もし暴れたら、ここでお前を犯すぞ」

その言葉に美穂は震え上がり、青ざめた顔で顔を上げると、また雅人の視線とぶつかった。

今度はっきり見えた。彼の目尻が紅く、血を嗜むような冷たさを帯びており、彼女の心臓を強く震わせた。


三井雅人という男は……


彼が自分を気にしているのかと思い巡らせていると、彼が突然ジョーカー爆弾を叩きつけ、彼女の手を押さえ込んだ。続けて何発も爆弾を落とされ、反撃の隙さえ与えられなかった。

美穂は雅人が手札を全て使い切るのを見て、表情がたちまち沈んだ。

一方黒崎龍之介は興奮して叫んだ。


「僕も残りは階段一組だけだよ!」


そう言うと、連番のカードをテーブルに叩きつけ、北斗と美穂を挑発するように眉を動かした。

「君たちの負け。ルール通り、二人とも服を一枚脱いでもらおうか」

北斗は諦めたように笑い、手に残ったカードの束を置くと、上着を脱いだ。


黒崎龍之介はようやく美穂の方に向き直った。


「小松さん、うちの北斗はもう脱ぎました。次はあなたの番ですよ」


美穂の顔が強張る。


北斗はスーツを着ていたから、上着を脱いでもワイシャツが残っている。しかし彼女が脱げば、即座に裸になってしまう。


周囲を見渡すと、皆が彼女の服を脱ぐのを待っているようで、誰一人として助け舟を出そうとしない。

龍之介さえも期待に満ちた眼差しで、彼女の体を舐めるように見つめている。

彼女は今、家畜のように、権勢を誇る御曹司たちの観賞物と化していた。

素直に従えば逃してやるかもしれないが、抵抗すれば、このVIPルームから簡単には出させてもらえないだろう。


美穂は悟ったように、固く握りしめていた拳をそっと開いた。

どうせ死ぬ身だ、体面など気にすることはない。

背中に手を回し、ドレスのファスターを外そうとしたその時、北斗が突然口を開いた。


「僕のプレイが下手で小松さんを巻き込んでしまった。今回の分は僕が代わりに脱ぎます」


そう言い終えると、北斗はためらわず唯一のワイシャツを脱ぎ、鍛え上げられた腹筋を露わにした。

黒崎龍之介は北斗が美穂をかばうために自分の面目すら顧みない姿を見て、ますます美穂への敵意を強めた。


彼女は歯を食いしばりながら美穂を睨みつけた。美穂はその視線を避け、北斗に感謝の眼差しを向けた。


「ありがとうございます」

北斗はさりげなく手を振った。


一同がこの件はこれで終わったかと思ったその時、ソファに寄りかかって冷たく距離を置いていた雅人が、突然低い声で言い放った。


「遊びなら、ルールを守るべきだろう」



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