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第12話

「これを見せたいのか?」秋生は眉をひそめた。


「これが容疑者です。」


画面には、四、五歳ほどの子供たち三人が背中を向けて映っていた。それぞれ膨らんだリュックを背負っている。


「そうです。監視カメラで彼らが最も怪しいと判明しました。それに、ハッカーの位置情報もまだホテル内にあり、しかもかなり近いです。同じフロアかもしれません。」


子供たち? ハッカー?


秋生は両者が結びつかず、困惑する。


だが、ハッカーの狙いは明らかに自分たちだ。目的はまだ不明だが――


「まだいるなら、見つけ出せ。」


「かしこまりました!」


秋生は写真をじっと見つめる。女の子の姿はぼやけているが、その服装…どう見ても、あの車に落書きした子供だ。


車に落書きした子、電話で「ママ」と呼んでいた子、ハッカーの疑いがある子――知絵に出会ってから、やたらと子供が周りに現れる。


偶然が重なると、もはや偶然ではない。


……


秋生が部屋に戻ると、知絵の姿はなかった。


だが、逃げ切れるはずがない。せいぜい部屋を移っただけだろう。


その頃、知絵は三人の子供たちを連れて、別の空き部屋に身を潜めていた。


静かにドアを閉めると、両手を腰に当てて言った。「慎一、陽太、星奈!ママの言うこと、ちゃんと聞いてた?」


三人は並んで立ち、小さな手をきちんと重ね、上目遣いで知絵を見つめている。


慎一が一歩前に出て、しっかりした表情で言った。「ママ、僕が弟と妹を連れてきたんだ。叱るなら僕だけを。」


陽太もすぐに続いた。「陽太も一緒に来た!お兄ちゃんだけのせいじゃない!」


星奈は知絵の服の端をつまみ、大きな瞳でうるうるしながら、「ママ、ごめんなさい。星奈が行きたいって言ったの。お兄ちゃんたちのせいじゃないよ……」と言った。


知絵は、子供たちが自分を心配してくれていることはわかっているが、これはあまりに危険すぎる。バレたときのことを考えると、ぞっとする。


三人は手を広げ、素直に叱られるのを待っている。


その姿に、特に星奈が今にも泣きそうな顔をしているのを見て、知絵はもうきつく叱る気になれなかった。


ため息をついて、しゃがみ込んで三人を抱きしめた。「みんな、ママのことを思ってくれてありがとう。でも、これは本当に危ないことなの。わかった?」


「ごめんなさい。」三人が同時に口をそろえた。


「分かってくれたならいいわ。もう二度としないでね。」知絵は優しく頭をなでた。「今は叱っている場合じゃない。どうやって君たちをここから逃がすか、考えないと。」


慎一が顔を上げた。「ママは一緒に行かないの?」


知絵は首を振った。今の状況では逃げても余計にややこしくなる。もう逃げないと決めた。いつかは向き合わなければいけないことだ。


気持ちを落ち着かせて、こう言った。「よく聞いてね。明日、ママは秋生さんと一緒に京都に戻る予定よ。明日の朝、君たちはこの部屋から出ないで。二人が出発した後で、ママが知り合いに君たちを迎えに来てもらうから。」


三人は顔を見合わせ、何やら相談するような目つきになる。


「いい?今度こそ、絶対に言うことを聞いてね!」


「うんうん!分かった!」


壁一枚隔てて――


秋生は部下を使ってフロア全体を捜索させたが、何も見つからなかった。ハッカーの位置情報もすぐに消えてしまった。


指にはさむ煙草の火が、ぼんやりと揺れる。頻繁に現れる子供たち、知絵の説明もどこか腑に落ちない。


たとえば、迎えに来た女性と電話で「ママ」と呼ばれていた女性が別人だったこと。


電話で「陽太くん」と呼ばれていた、ママを呼ぶ子供の声。


そして、今夜、ハッカーの疑いがかかっているのに忽然と消えた子供たち。


最初の子は知絵の職場、次は彼女の携帯、そして今度はこのホテルで三人……すべて知絵につながっている。


この瞬間、秋生は確信した。知絵は、あの時、本当に子供をおろしていなかったのではないか――


「田中!」


田中がすぐに入ってくる。「社長。」


「知絵のことを徹底的に調べろ。本人が無理でも、周囲の人間を一人ずつ洗え。絶対に手がかりが見つかるはずだ!」


「承知しました!」


夜が明け始める。


知絵は、まだ眠っている子供たちを起こし、人が来るのを警戒して、またベッドの下に隠れさせた。


そして、予想通りノックの音がする。


ドアを開けると、田中が立っていた。


「奥様――」


「もう離婚したわ。南と呼んで。」


「あ……南さん、専用機の準備ができました。社長と小野さんはすでに空港へ向かいました。ご案内します。」


知絵はうなずいて、「わかった」と答える。


部屋を出るとき、ふとベッドの下から陽太がこっそり顔を出しているのが目に入り、急いで目で合図を送る。陽太はすぐに隠れた。


「ママ、行っちゃった……」陽太が小さな声でつぶやく。


星奈は二人の兄の間に挟まれて、不安そうに言う。「私たちはどうするの?ママはイギリスに残れって言ったけど、星奈はだめパパや嫌な女の人にママがいじめられないか心配……」


「僕も嫌だ!あの女の人、意地悪そうだもん!」陽太も同意した。


二人は目配せをする。


陽太が提案した。「やっぱり僕たちも京都に帰ろうか?ママをこっそり守るんだ!」


「賛成!」星奈が目を輝かせて慎一を見る。「お兄ちゃんは?」


慎一は首を横に振った。「危険すぎる。ダメだ。」


星奈はすぐに陽太に向き直り、「お兄ちゃんも賛成だって!」


陽太は、「じゃあ、変なおじさんに頼んで、僕たちも帰ろう!」


星奈はまた慎一に聞いた。「お兄ちゃん、本当に大丈夫?」


慎一は渋い顔で、「リスクがあるし、僕は……」


言い終わらないうちに、星奈が小さな手で慎一の口をふさいで、「お兄ちゃん、ダメって言っても、もう決まり!」


陽太はすぐに星奈とハイタッチした。「決定だね!」


慎一「……」


京都に戻るのは、あまりにも危険だ。頭では反対するしかない。


「星奈!」慎一は説得しようとした。


星奈は慎一にギュッと抱きつき、甘えるように尋ねた。「お兄ちゃんは、ママがいじめられたら嫌でしょ?」


「うん……嫌だ。」


「ママのこと、放っておけないでしょ?」


「うん……」


「じゃあ!今、ママを守れるのは誰?」


「僕たち。」


「うんうん!」星奈は大きくうなずいて、「だから一緒にママを守りに行こう?ね?」


慎一「……」


たしかに……その通りかもしれない。

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