日本製ファンタジーTRPGの至宝、『ワースブレイド』。
その小説版として日下部匡俊先生が展開する『剣の聖刻』シリーズの新作『練/剣 』は、剣と血と欲望が渦巻く世界で、唯一無二の「月の門」を開くため、修行と冒険を重ねていく少年の成長物語。
濃密な世界観と、人間関係の緊張感がガチで刺さる、本格ダークファンタジーです。
第1話から、読者の心を一気に掴む怒涛の展開!
冒頭から現れた「痩身の女」に、ゾクッときました。
虚無の瞳に睨まれた時の、底知れない恐怖感が強烈に伝わってきます……。
そしてお待ちかね、巨人=操兵の、迫力溢れる描写。
しかし主人公はこれにも全く怯まず、むしろ「おれの番か」と立ち上がるのです。こいつ、ただ者じゃない!
修行編では、座学、歩行、武術と過酷な日々を送る主人公。
心折れるギリギリのところで覚醒を果たす、少年漫画的カタルシスも味わえて最高でした。
そしてようやく、明らかとなった主人公の適性、「月の門」――しかし、それは本来、「女性にしか持てない力」と言われているもの。
男性である主人公は、周囲に「不可能」と言われながらも、運命に立ち向かい、史上初の「男の月使い」になることを決意します。
主人公を導く師となったバラハンの冷徹さと、時折見せる妖艶な誘惑的態度のギャップも、危うく、とても魅力的です。
そして物語の舞台は一気に広がり、巨大都市オレインコへ。
身分を隠して街に潜入するスパイ映画感覚に、ワクワク感をかきたてられました。さらに、主人公の持つ短剣に隠された秘密が明かされていく展開がめちゃくちゃ激アツ!
家族のため、そして自分自身の誇りのため、強さを求めてひたむきに進む主人公。命がけの修行を経て、やがて巨大な陰謀に巻き込まれながらも、利用された自覚すらも冷静に受け止めて「見くびられたな」ときっぱり言える、胆力の持ち主です。
苦境に立たされても決して折れず、限界をぶち破っていく少年の反骨心が、最高に推せます。
読みどころ満載の、2025年小説版ワース最新作。要注目です!