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第2話 どうして

どうしてだろう?

何故、私のこの気持ちが伝わらないのだろう。

あなたはこの国の第1王子なのよ。

その婚約者として、この国の三大公爵家の1つ、ヴェンツェル公爵家の息女である私が選ばれたのだから、普通の婚約ではないと分かっているはず。

この国の行く末を決める大事なことで、

誰よりも、あなたに相応しくて、

誰よりも、あなたのことを考えている。

それも、卒業したらすぐに婚約披露パーティーが行われる、高等部3年のこの時期も大事なのに、

どうして分かってくれないのだろう?

私もあなたの側に生まれて、ずっと側にいるのに、何故、私の気持ちを分かってくれないのだろう。

いいえ、私があなたを慕っていることは知っているはずなのに、どうして、こんな酷い仕打ちをするの?

レインがあなたの乳母の孫で、一緒に遊んでいたのも知っている。

でも、

私だって生まれた時から、同じ歳ということで、婚約者になった。

私だって、あなたの側にずっといたわ。

私は・・・あなたのために、努力してきたのに、

どうして分かってくれないのだろう。

この胸の痛さには、あなたを見る度に、いつまでも慣れない。

殿下、

私はあなたを愛している。

何故、

何故、

少しも分かってくれないのだろう?

レインの桃色の髪と、可愛らしい顔と声が好きなの?

確かに私は可愛くはない。いつも冷たい目だと言われる。

私は、緑色の髪に、茶色い瞳。

それが気に入らないの?

どうしたら殿下の気持ちが、あの頃に戻ってくれるのだろう?

懐かしい、楽しかった日々が思い出される。

レインが現れたのは高等部に入ってからだ。それまでは、他の学園に通っていた。

この学園は、本来なら貴族だけが通う格式ある学園だが、秀でた平民は特待生として入学が出来る。

レインは乳母の孫ということで王宮の出入りを許され、少しは教育を受けていた。

そのせいもあるが、元々、学問には秀でていた。

入学が決まったと、嬉しそうに報告したあの時のレインに、微笑みかけた殿下の顔が、今でも忘れられない。

あの日から、全てが変わった。

穏やかで、

少しプライドが高く、

でも、私に優しく手を差し伸べてくれた、

愛しい殿下は、

消えてしまった。


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